(1)LPS-DNA複合体生合成の解明:前年度より、純度の高いLPSの精製を行ったが、LPS-DNA複合体の病原性を検討するにあたり、結合様式の解明が必要であった。そこで、ATCC29523株のLPS生合成遺伝子変異株WQ13Lを作成し、さらにすでに作成している凝集因子変異株HM23MLを比較対象に用いた。まず、菌体外DNAと結合するLPSが細菌表面に存在する遊離していないLPSであることを確認した。次に、抽出時に使用するバッファーのpHおよびEDTAの添加を行い、菌体外DNAがイオン性だけでなく、非イオン性に結合している可能性が示唆された。また、変異株を用いて菌体外DNA-LPS複合体の抽出操作を、EDTAを加えて行い、陰性コントロールとしてボイリング操作を行ったところ、LPS生合成遺伝子変異株では菌体外DNAも検出されなかったことから、菌体外DNAが非イオン性にLPSと結合していることが示された。 (2)菌体外DNA-LPS複合体の病原性の解析:菌体外DNA-LPS複合体との比較として純LPS、E-coliの抽出LPSを用い、病原性の検討を行った。予定していたLPS生合成因子欠損株に関しては、複合体の形成がほぼ見られなかったため除外して行った。今回の検討では炎症性サイトカインであるTNF-αを対象として行い、THP-1細胞に対して純LPSおよび菌体外DNA-LPS複合体を加え、産生されるTNF-αをELISA法を用いて測定した。3者ともKDO法によりLPSの総量を揃えた場合、純LPS、DNA-LPS複合体ともに産生量が減少し、DNA-LPS複合体がより減少して示された。
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