社会保障に関する給付を受けようとする市民は、類型的に何らかの欠乏状態にあることが多い。そのような市民が、自らの社会保障給付に関する受給権について、行政から不利益な決定を受けて、それを法的に争おうとする場合、この争いを審理する権利救済機関は、常に「中立」であればよい、というわけではない。市民よりも行政が圧倒的に強大である場面で、権利救済機関が中立であることは、実質的に対等な審理の確保を担保しないためである。 本研究は、権利救済機関が、自らの中立性を冒してでも、審理の実質的公平を確保するために、一方当事者たる市民をエンパワーするような審理を実施することが許される条件を解明することを目指した。
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