研究課題/領域番号 |
25870511
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
萩原 綱一 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00585888)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 痛覚 / 島皮質 / 二次体性感覚野 / Pain matrix / 痛み受容 |
研究実績の概要 |
二次体性感覚野(S2)と島皮質は、痛覚と触覚の処理に関与していることはよく知られている。最近のfMRI研究ではS2・/島皮質の機能マッピングが行われ、痛覚はS2前方~島皮質後方、触覚はS2後方に局在が示唆されている。しかしながら、両者の情報が時間的に近接し情報が混在する場合にどのような相互作用が生じるのかは未だ明らかではない。今回、我々は触覚および痛覚刺激をそれぞれの皮質到達時間を考慮して与え、脳磁図を用いて時間・部位特異的な皮質活動を用いた痛覚ゲーティング(=痛み受容の変化)メカニズムについて検討した。健常成人11名を対象として触圧覚(Aβ)刺激および痛覚(Aδ)刺激を与え、体性感覚誘発磁場を記録した。大脳皮質到達が同時ないしは痛覚入力が僅かに先行するよう刺激を加え、さらにS2/島皮質内の痛覚の機能局在に特異的な誘発反応の変化を検証した。痛覚の頂点潜時は遠位条件では140-180 ms、近位条件では110-150 msであり、伝導速度は10-15 m/sと推定された。触覚の伝導速度を50-60 m/sとすると、皮質到達時間の差は約60 msと推定された。そのため、脳内でゲーティングを生じさせるためには痛覚刺激を触覚刺激より60 ms先行させて与えた。S2/島皮質内における局在はfMRI研究で示されたように痛覚が触覚より有意に前方に位置し、前者の活動最大点において振幅の低下が認められた。視覚的アナログ尺度により主観的にも痛みが減弱することが示された。皮質到達時間および機能局在の違いを基に検討すると、S2・島皮質に特異的な痛み抑制メカニズムが生じることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
痛覚抑制(ゲーティング)について島皮質・二次体性感覚野の関与を示す結果を得て、現在論文投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
痛みを伝える線維には、伝達の早いAδ線維(fast pain)と伝達の遅く温度覚とも関連のあるC線維(slow pain)がある。これまで得た反応は前者に関連するものであるが、後者も痛み受容の変化(ゲーティング)のメカニズムにおいて重要である。これからはC線維に特異的な脳内反応について検討・考察を加えて行く予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
脳磁計の使用代金は時間当たりで請求されるが、実験手順の効率化により使用時間が当初よりも短くなった。
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次年度使用額の使用計画 |
痛み刺激用電極(消耗品)の購入に当てる。
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