研究課題/領域番号 |
25870513
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
坂東 麻衣 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40512041)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 円制限3体問題 / 周期軌道 |
研究実績の概要 |
本研究の中心課題である,これまでに解析的な扱いが困難であった多体系のダイナミクスに対する効率のよい軌道設計論を展開した.具体的には,スライディングモード制御理論の観点から周期軌道の解析を行った.スライディングモード制御とは,非線形制御理論の一手法であり,制御入力を付加することでシステムの状態を多様体上へ拘束することで目標状態への収束や,外乱に対するロバスト性を保証することができる.ハロー軌道の安定化の方法として,単純な位置フィードバック制御により,ハロー軌道の不安定成分のみを打ち消し,準周期軌道を作り出すことが可能であることが知られている.申請者は昨年度までに,単純な1自由度の鞍点型平衡点をもつダイナミクスに対して,位置フィードバックによる安定化のメカニズムを,スライディングモード制御による中心多様体への状態の拘束として理解できることを明らかにしてきた.本年度は,この解析を高次元の場合へと拡張し,詳細に解析することで,これまで用いられてきた位置フィードバック制御の限界を明らかにした.さらに,スライディングモード制御の本質であるロバスト性を生かし,不確定性を含むダイナミクスに対してロバストな制御方法を提案した.その際,チャタリングとよばれる高周波の切り替わり現象とロバスト性のトレードオフを考慮し,適切なロバスト性を実現しつつチャタリング現象を抑える手法を提案した.また,最適レギュレータの重み行列を変化させフィードバックゲインと燃料消費量の関係を明らかにした.そして望ましいゲインをスライディングモードの制御系のフィードバックゲインに利用することで,燃料効率のよい制御系を実現した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
スライディングモード制御により制御理論を用いることにより,安定化が可能であることに加え,最適制御理論の重み行列から計算されるゲインを用いることで,スライディングモード制御を用いた場合であってもチャタリング現象を最小限におさえ同時に燃料消費をおさえることができることが明らかとなった,これにより当初予定していたよりはやく国際会議での発表を行う目処がたった.
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今後の研究の推進方策 |
2体問題でのフォーメーションフライトにおいては地球周回円軌道,楕円軌道近傍での線形化した相対運動ダイナミクスに対して,最適解を解析的に決定する手法がとられてきた.地球を周回する軌道上の主衛星からみた従衛星の相対運動の運動方程式は,CW方程式とよばれる線形化された方程式により記述される. CW方程式は扱いが容易であることから,これまでの研究ではこの方程式を用いた解析・制御系設計が主に行われてきた.これに対して3体問題では,軌道の解析解が存在しないため,解析解を利用した最適軌道の設計をすることができない.このためDifferential Correction(微分修正法)により数値的に燃料効率の良い軌道や,フォーメーション軌道を設計するアプローチがとられている.しかし,その設計手法は数値的,試行錯誤的なものであり,設計理論の確立には至っていない.特に,宇宙ミッションにおいては,搭載できる燃料が限られていることから,上記の制御系を燃料効率良く実現することが重要であり,機械システムにおいて用いられる制御とは異なった理論が必要となる.このため今後は,昨年度までの検討をもとに,複数の宇宙機のフォーメーションフライトを実現するための方法を検討する.
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議で発表予定だったが,予定があわず見合わせた
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議での発表を予定
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