当初の予定としては、統合失調症一卵性双生児不一致ペアの全ゲノム解析を行うことであったが、複数ペアの全エキソン解析に変更した。その理由として、まず第一に現在の解析技術では膨大な偽陽性が検出されることが明らかであり、全ゲノム解析から検出された不一致例ペア間での相違点を他の方法で確認することはコスト面で超過してしまうこと。第二に、これまで全エキソンシーケンスでのデータを確認するためにキャピラリーシーケンスによる検証を行っていたが、その方法を変更する必要性があることを認識したためであった。次世代シーケンサーで得られた結果を検証するためこれまで我々が行っていたキャピラリーシーケンサーは視覚的判断を必要とし、定量性には適さない可能性がある。我々が過去に行っていた統合失調症ではないが他の精神疾患の双生児不一致ペアにおける全エキソン解析において複数の相違箇所を同定したが、いずれもdepthは100前後であり、100のうち10%前後で異なる塩基が示されていた。これら相違箇所は全てキャピラリーシーケンスで検証したが、どの相違箇所もキャピラリーシーケンスでは相違点は確認出来ず、双生児間では一致するという結果となっていた。 今回統合失調症一卵性双生児不一致ペア4組と自閉症スペクトラム一卵性双生児不一致ペアおよびその両親について全エキソン解析を行った。 まず自閉症スペクトラム双生児不一致例においては、その両親の検体が得られたため、解析方法としては罹患者が持っていて、両親、非罹患者が持っていない塩基置換を検出した。 4組の統合失調症一卵性双生児不一致例に関しては、双生児間のみで罹患者のみにみられる塩基置換を検出した。 それら複数の双生児不一致例ペアから検出された塩基置換は潜在的候補遺伝子として、今後キャピラリーシーケンスだけではなく、他の方法でも検証していく予定であるが、今年度中の実現は適わなかった。
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