研究課題/領域番号 |
25870522
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
庵谷 治男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (20548721)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | マネジメント・コントロール・システム / 変化 / ケース・スタディ / 制度論 |
研究概要 |
本研究は、マネジメント・コントロール・システム(以下、MCSと略)の動態的変化を制度論に基づいて明らかにすることを目的としている。MCSの動態的変化を分析するために、本研究ではMCSとして新たに導入された管理会計が導入前後において組織成員間に対してどのような影響を与えているかというリサーチクエスチョンを設定している。本年度は、①ケース・スタディによる質的データの収集と、②文献レビューに基づき制度論を援用した分析フレームワークの整理を中心に実施した。①について、リサーチサイトであるホテル日航プリンセス京都においてヒアリング調査を2013年7月3日に同社経営陣3名に対して、また2014年1月22・23日に同社現場マネジャーなど8名に対して実施した。とりわけ、8名へのヒアリングは同社が10年前に新たに導入した管理会計の仕組みについてどのような対応をしてきたのかについて行い、結果的に組織成員の能力や業務(とくに対人的サービス業務)によって異なった行動をとっていることが明らかとなった。②について、制度論を援用した管理会計研究の網羅的なレビューを行い、論文としてまとめた。制度論といっても管理会計研究では、旧制度派経済学の流れを組むフレームワークと新制度派社会学に基づく分析視座とに大きく区分され、研究目的や対象によってその理論の採用に配慮するべき点が明らかとなった。 2013年6月にThe 9th European Network for Research in Organisational & Accounting Change Conference(Finland)で、9月にThe 9th Management Control Research Conference(Netherland)で学会報告を行い、MCSの研究者や制度論を援用した管理会計の研究者と交流することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、論文のレビューとインタビュー調査を計画していた。それに対して、論文については制度論を援用した管理会計研究の網羅的レビューを実施し、学術誌として刊行している。一方、インタビュー調査については、計画を修正した。当初予定していたリサーチサイトであるフェニックス・シーガイア・リゾートおよびハウステンボスについて、トップの交代や経済環境の変化によって調査の継続が困難と判断し、別のリサーチサイトに調査協力を依頼した。研究計画でもその点について触れているが、ホテル日航プリンセス京都とホテル京セラから協力の許可を得ることが可能となった。これによって、当初計画から遅れることなく、概ね順調に調査を実行することができているといえる。また、海外で2回研究発表を行っただけでなく、制度論を援用した管理会計研究で世界有数の研究者を誇る英国マンチェスター大学で複数の研究者と制度論利用の意義について意見交換もでき、今後の研究の可能性と課題を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、前期を中心にインタビュー調査を継続する。とくにホテル京セラと5回にわたり計約30名のインタビューの許可を得ることができた。これにより、マネジメント・コントロール・システムの動態的変化と組織成員の行動の変化を読み取っていくことが可能となる。ただし、質的データの限界として恣意性の介入を完全に排除することは困難なため、調査にあたっては細心の注意を払う。また、ホテル日航プリンセス京都のデータをまとめるために、ケース・スタディ論文として執筆することを予定している。また、データの整理が十分できた場合に学会(日本管理会計学会など)にて研究報告を予定している。
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