研究課題/領域番号 |
25870522
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
庵谷 治男 長崎大学, 経済学部, 准教授 (20548721)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | マネジメント・コントロール・システム / 変化 / ケース・スタディ / 制度論 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、マネジメント・コントロール・システム(以下、MCS)の動態的変化のなかで、複数のコントロール間の関係性がいかにして形成されるのかを、制度論に基づきながら長期的なフィールド・スタディを用いて明らかにすることである。これまでのケース・スタディをつうじて、新たなMCSの「推進者」と「受容者」の存在がMCSの動態的変化を観察するうえで重要な要素であることが明らかとなっている。本年度は、鹿児島県にあるホテル京セラに対して聞取り調査を行った。同社はアメーバ経営を導入して20年が経過するが、アメーバ経営におけるMCSがどのようにして変化しているかを観察する上で有用なリサーチサイトといえる。具体的には、宿泊・料飲・宴会等に従事する従業員(マネジャー含む)約20人にアメーバ経営の実践について聞取り調査(1人あたり1時間)を実施した。収集したデータは即座に文書化を行い、またノートの記述との相互確認を行った。 くわえて、これまでの成果をまとめるために2本の論文を執筆した。①は査読付き学術誌であり、ホテル日航プリンセス京都の事例を制度論的パースペクティブに基づいて考察を行っている。②は査読はないが、早稲田大学商学学術院教授清水孝先生に何度も草稿をみていただき、またKCCSマネジメントコンサルティング会社の堀氏にも助言を何度もいただき完成させている。 ①「フロントラインにおける管理会計利用がインタラクティブ・ネットワークに与える影響-制度論的パースペクティブに基づくケース・スタディ-」(単)『メルコ管理会計研究』第7号‐Ⅰ,2014年10月。 ②「ホテル日航プリンセス京都におけるアメーバ経営の導入と実践」(単)『企業会計』第66巻, 2014年12月。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、これまでのリサーチサイトに加えてもう1社(ホテル京セラ:鹿児島)で聞取り調査を複数回行った。また、同時にマネジメント・コントロール・システムのフレームワークを構築するために、Simonsの4つのコントロール・レバー(信条・境界・診断型・インタラクティブ)を整理した。さらに、関連するマネジメント・コントロール・システムに関する先行研究の網羅的レビューを行った。以上のことから、平成25年度までに実施したホテル日航プリンセス京都の事例研究および制度論のレビュー研究、本年度に実施したホテル京セラの事例研究およびマネジメント・コントロール・システムのレビュー研究がこれまで達成した具体的な研究内容である。これにより、最終年度である本年度でマネジメント・コントロール・システムの動態的変化に関するフレームワークを構築できると見込んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度であるため、これまでの研究を整理しフレームワークの構築を検討している。とくに、2つのケースが宿泊業であるため宿泊業の事業特性を考慮して、仮説を構築したい。さらに、研究を推進するなかで新たに発見した点として、両ケースとも製造業である京セラのグループ企業であり、アメーバ経営を導入している点である。よって今後の焦点として製造業で生成されたアメーバ経営のマネジメント・コントロール・システムが、非製造業である宿泊業にどのように導入され変化しているのかを解明していく。なお、この点は当初の研究計画には明示されていなかったが、当初意図した目的であるマネジメント・コントロール・システムの動態的変化を明らかにすることに変わりはない。したがって、ケース・スタディを進めるなかで新たに発見した知見を加えることでよりフレームワークの精緻化を図ることができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に他の外部競争資金を獲得することができ、それによって資金に多少の余裕が生じたことがあげられる。具体的にはメルコ学術振興財団の研究助成である。リサーチサイトや学会・研究会等への旅費ならびに学術雑誌・書籍、また必要な消耗品について、消費税の増額を影響を受けつつも予算内の支出となった。なお、研究の実施に現時点で影響はなく、計画していた支出はできている。
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次年度使用額の使用計画 |
本年度はリサーチサイトへの追加調査の可能性や学会・研究会への旅費が必要と考えられる。また、学術雑誌・書籍の購入も昨年同様に支出を見込んでいる。繰越が35万円程度発生しているが、上述した計画を遂行する上で必要であると考えられる。
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