研究実績の概要 |
本研究の目的は,マネジメント・コントロール・システムの動態的変化のなかで,複数のコントロール間の関係性がいかにして形成されるのかを,制度論に基づきながらケース・スタディに基づき,明らかにすることである。なお,マネジメント・コントロール・システムはコントロール・パッケージとして捉えることができる。 本年度は最終年度であり,これまでの事例としてホテル日航プリンセス京都およびホテル京セラの調査内容を論文として執筆した。具体的には,博士学位申請論文(現在,審査中)のなかで両事例をとりあげ,京セラと事例2社との比較という形式で論じている(庵谷治男「アメーバ経営導入にみる管理会計システムの多様性―事業特性差異に基づく探索的事例研究」『博士学位申請論文』pp.1-244)。事業特性(いわゆるビジネス・モデル)の相違がパッケージとしてのアメーバ経営の基本体系と構成要素に相違をもたらすことを明らかにしている。また,導入当初の組織構成員の抵抗がルーチンを繰り返すなかで自明視され,制度化されている様子を描出している。 さらに,マネジメント・コントロール・システムの代表的なフレームワークであるSimonsのコントロール・レバーに関する先行研究をレビューし,コントロール間の関係性や分析上の課題を含めて成果としてまとめている(庵谷治男(2017)「マネジメント・コントロール・システムの分析フレームワークとしてLevers of Controlを採用することの意義と課題―Simonsの所説を中心に―」『経営と経済』第96巻, 第4号, pp.43-80.)。
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