ビスフォスフォネート関連顎骨壊死(Bisphosphonate-Related Osteonecrosis of the Jaw:BRONJ)は、ビスフォスフォネート(BP)製剤使用患者に起こる副作用の1 つであるが、病因が不明なために確定的な治療法および予防方法が存在しない。BRONJ は通常の歯科治療を妨げ、患者のQOLを著しく低下させることから、病因の解明は急務であるため、本研究の目的は、BRONJ の病因を解明し、治療方法または予防方法を見出すことにある。 現在までの申請者の研究を基盤として、平成26年度には抗がん剤とビスフォスフォネート製剤との併用により、BRONJが100%発現するマウスBRONJモデルを開発した。そして、このマウスBRONJモデルは、使用する抗がん剤の濃度依存性にBRONJを発現する頻度が高くなり、これらには強い相関が認められた。 一方申請者は、BRONJモデルの上顎骨(ONJ部位を含む)、脛骨、腓骨、骨髄、脾臓、リンパ節等あらゆる臓器を摘出し、免疫組織学的検索と組織形態学的検索に加え、マイクロCTを使用した3次元的構造解析も行った。その結果、脛骨においては、BP製剤使用群で骨の3次元的構造が優位に変化し、TRAP染色により破骨細胞の活動性が優位に抑制されていたことも確認されたことから、使用したBP製剤は薬剤効果を示していることが確認された。また、抗がん剤の影響を検索すると、骨髄細胞は著しい減少を認め、投与量依存性に細胞の減少量が大きくなっていた。 一方で、抜歯窩周辺の組織検索の結果、BRONJ群では、マクロファージが発現する免疫関連の受容体発現が抑制されていることが分かり、その発現抑制は抗がん剤の濃度に依存性に強くなった。以上からBRONJには、免疫応答機構に関与する特定の受容体の発現が減少した結果、免疫応答機構が低下し、治癒不全が惹起されてBRONJとなっている可能性が考えられた。
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