研究課題/領域番号 |
25870524
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
鍋島 武 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30546859)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 病原体の侵入 |
研究概要 |
研究計画に基づき、2013年8月17日から19日に長崎県五島市富江町の豚舎周辺で、二酸化炭素を誘引剤としたトラップ、紫外線を用いたトラップで蚊の採集を行った。五島市では2580頭の蚊を採集し、そのうち1600頭が日本脳炎ウイルスの媒介ベクターとして重要なコガタアカイエカであった。その後2013年8月28から30日に対馬市上県町佐護の水田周辺、また厩舎周辺で、同じくトラップ、また吸虫管を用いた蚊の採集を行った。対馬市では採集された2472頭の蚊のうち、1772頭がコガタアカイエカであった。 採集されたコガタアカイエカを10頭ずつのプールに分け、ホモジナイズし、遠心して上清をC6/36細胞に摂取し、27度で培養の後培養上清を回収した。 この培養上清中に、蚊由来の日本脳炎ウイルスが含まれているかを確かめるためRT-PCRを行った。五島市で採集された蚊からは新しく2系統の日本脳炎ウイルスの分離に成功した。一方、対馬市で採集された蚊からは、日本脳炎ウイルスを回収することはできなかった。 回収された日本脳炎ウイルスのゲノムRNAのうち、Eタンパクをコードしている領域をRT-PCRで増幅し、その塩基配列を解読した。その配列をデータベース上で公開されている、機知の日本脳炎ウイルスの塩基配列d情報と比較したところ、五島市で新しく分離された日本脳炎ウイルスは遺伝子型1、サブクラスター2に属しており、2010年以降五島市に生息している日本脳炎ウイルスに系統的に近縁であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
五島列島、対馬市でウイルスのベクターとなる蚊の採集、また五島列島で採集した蚊からは本研究の対象である日本脳炎ウイルスの分離に成功、遺伝子配列上の解読を目標通りに行うことができている。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年も、25年と同様に五島列島で蚊の採集を行い、日本脳炎ウイルスの分離、遺伝情報の解読を行う。 対馬市の蚊からウイルスが分離できなかったことについては、対馬市で採集された蚊が、羽化した後あまり時間の経っていない、未吸血の蚊であったことが関係しているのではないかとの指摘を受けている。平成26年度に対馬で行う予定の蚊の採集については、島内での調査地、蚊の採集を行う時期等、検討が必要となる。
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次年度の研究費の使用計画 |
採集された蚊が、日本脳炎ウイルス以外の蚊媒介性ウイルスを保有している可能性を考え、次世代シークエンサーを用いた網羅的な遺伝子の検索を行う予定である。次世代シークエンサーを用いた実験の時期が遅れていることにより、差引額が発生している。 差引額分を、次世代シークエンサーによる、蚊由来の遺伝子の網羅的な解読のための消耗品の経費として使用する予定である。
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