研究計画に基づき、2014年には8月24日から26日にかけて長崎県五島市富江町の豚舎周辺で、二酸化炭素を誘引剤としたトラップ、紫外線を用いたトラップで蚊の採集を行い、2809頭のコガタアカイエカを採集した。 2014年には全国的にブタ流行性下痢症が発生し、豚舎周辺での蚊の採集が困難となったため、蚊の遺伝子型の調査のために9月24日から26日にかけて鹿児島県奄美市秋名地区の水田地で蚊の採集を行い、40頭のコガタアカイエカを採集した。採集されたコガタアカイエカを10頭ごとにプールに分け、ホモジナイズして遠心し、上清をc6/36細胞に接種して27度で培養の後、上清を回収した。この培養上清中に、蚊由来の日本脳炎ウイルスが含まれているかを確かめるためRT-PCRを行った。五島市で採集された蚊からは新しく1系統の日本脳炎ウイルスの分離に成功した。 回収された日本脳炎ウイルスのゲノムのうち、Eタンパクをコードしている領域をRTーPCRで増幅し、その塩基配列を解読した。その配列をデータベース上で公開されている、機知の日本脳炎ウイルスの塩基配列情報と比較したところ、五島市で新しく分離された日本脳炎ウイルスは遺伝子型I、サプクラスター2に属しており、2010年以降五島市に生息している日本脳炎ウイルスに系統的に近縁であることが示唆された。 日本脳炎ウイルスの主要なベクターであるコガタアカイエカは、日本固有の遺伝子型集団と、アジア大陸、台湾、沖縄に固有の集団に別れる事が近年明らかになってきた。奄美市で採集されたコガタアカイエカの遺伝子型からは、奄美大島では両方の遺伝子型の集団が混在している事が明らかになり、琉球列島を通してコガタアカイエカが移動している可能性が示唆された。
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