平成27年10月10日に、日本私法学会第79回大会(開催地:立命館大学)において、「無過失責任における免責規定の適用要件に関する一考察――災害時の環境汚染を素材としたアメリカ法からの示唆」という題目で研究報告を行い、これまでの研究成果を公表した。さらに、同月25日に、小林寛(単著)「洋上掘削施設に起因する油濁事故に対する責任制度に関する一考察――メキシコ湾原油流出事故(The Deepwater Horizon Oil Spill)を踏まえた米国油濁法(The U.S. Oil Pollution Act of 1990)からの示唆――」早稲田法学会誌第66巻1号97頁~142頁(平成27年10月25日)を発表した。 当初の計画通りに、平成26年10月に発表した論稿の研究報告を平成27年10月10日に行うことが出来た。当該研究報告は、自然災害を契機として発生した環境汚染(福島第一原発事故)および自然災害を契機とせずに発生した環境汚染(メキシコ湾原油流出事故)を比較しながら、無過失責任の下での免責規定の適否を検討したものである。これに加えて、上記論稿において、米国で史上最悪の環境事故とされるメキシコ湾原油流出事故を踏まえて、米国油濁法からの示唆を受けながら、洋上掘削施設に起因する油濁事故に対する責任制度に関する考察を行った。その結果、米国油濁法が、洋上掘削施設に起因する油濁事故についても厳格な責任制度、責任制限制度および補償基金の制度を定めていることに対しては、正に包括的な法制度であると評価すべきであること等を指摘した。 研究期間全体を通じて、災害時に発生した環境汚染を素材として、無過失責任の下での免責規定の適否の判断は、被害者の保護の見地から、厳格かつ限定的に行わなければならないことを指摘した。
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