65歳以上の高齢者で介護予防を目的とした教室参加者に研究協力を依頼した。自己申告により何らかの記憶障害の訴えがある地域在住女性高齢者143名が研究に参加した。 MMSEを行い、23点以下の明らかな認知機能低下を伴う高齢者は除外した。 研究参加者に対し、自記式質問紙により年齢、既往歴、健康状態、服薬状況について尋ねた。MCI疑いの有無を判断するために、1分間スクリーニングテストを用いた。転倒リスクを把握するために、鈴木らの転倒リスクアセスメントを用いて転倒リスクを得点化した。転倒リスクと一致した回答数は、危険因子の数としてカウントした。身体機能の測定として、両側の握力、開眼片脚立ちテスト、対象者が5回椅子から立ち上がる時間を測定する椅子立ち上がりテスト、及びTimed Up & Go testを実施した。 MCI疑い有り群の1分間スクリーニングテストの平均値は9.6±2.8個であり、MCI疑い無し群の平均値は16.3±1.6個であった。MCI疑い有り群はMCI疑い無し群と比べ、年齢が有意に高く (p<0.001)、握力が有意に低く (p<0.001)、椅子立ち上がりテスト、TUG、TUG manual及びTMT-Aでは有意に時間がかかっていた(それぞれp<0.001)。MCI疑い無し群に比べMCI疑い有り群では、転倒リスクありとする回答するものは、立ちくらみがあり (p=0.03)、脳卒中の既往があり( p=0.02)、及び転倒の不安があり(p<0.001)のものが有意に多かった。 また、6か月間の転倒追跡調査が可能であった98名のうち、転倒経験者は29名(29.6%)であったが、身体機能、認知機能に有意な差は見られなかった。
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