研究課題/領域番号 |
25870532
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
松尾 洋介 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10432981)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 紅茶 / ほうじ茶 / ポリフェノール / エピガロカテキン / テアフラビン |
研究概要 |
紅茶の製造過程におけるカテキン類の化学変化機構を解明するために、茶葉の主要カテキンであるエピガロカテキン(EGC)の酵素酸化生成物について詳細に検討した結果、主生成物dehydrotheasinensin Cなどの既知二量体とともに新規EGC二量体が得られ、各種スペクトルデータやECDスペクトルのTDDFT計算に基づいて構造を決定した。また、アセトニトリル中におけるEGCのラジカル酸化反応では、まずo-キノン体が生成し、水を加えることによって初めて二量化が進行することが明らかとなった。このことから、EGCの酸化的二量化反応においては水の存在が重要であることが分かった。さらに、EGCは酵素酸化によって茶葉成分の一つである没食子酸と反応し、様々な新規縮合生成物を与えることを明らかにした。 エピカテキン共存下における紅茶色素テアフラビン類の酵素酸化について検討した結果、ガロイル基の有無や結合位置によって反応速度や反応生成物が異なることが分かった。さらに、テアフラビン類のベンゾトロポロン環の酸化反応には、エピカテキンのo-キノン体との電荷移動錯体形成が重要であることが反応液の長波長シフトから示唆され、このことはDFT最適化構造およびUVスペクトルのTDDFT計算から裏付けられた。 ほうじ茶の製造過程において、カテキン類の含量が減少するとともに高分子ポリフェノールが増加する。そこで、茶の主要成分テアニンやグルコース共存下においてカテキン類を焙煎処理し、生成する高分子ポリフェノールを分離して13C-NMRスペクトルをほうじ茶高分子ポリフェノールと比較した。その結果、還元糖とカテキン類のA環6,8位との縮合反応がほうじ茶高分子ポリフェノールの生成に大きく寄与していることが分かった。 以上の結果は、紅茶及びほうじ茶の製造過程におけるポリフェノール成分の化学変化機構を解明する上で重要な知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
紅茶の製造過程におけるカテキン類の化学変化については、酵素酸化によるエピガロカテキンの新酸化生成物や没食子酸との新縮合生成物を得るとともに、各種スペクトルデータやECDスペクトル・NMRケミカルシフトのDFT計算により立体構造を決定した。さらに紅茶色素テアフラビン類の酵素酸化反応について、ガロイル基の有無や位置の違いにより反応性が大きく違うことを見出し、新規酸化生成物の構造を決定した。また、ほうじ茶の製造過程におけるカテキン類の化学変化については、これまで明らかとなっていなかったほうじ茶高分子ポリフェノールの生成に、グルコースなどの還元糖とカテキン類との縮合反応が大きく寄与していることを明らかにした。以上の結果から、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに明らかとなった紅茶色素テアフラビン類の酵素酸化におけるガロイル基の有無や位置の違いによる反応性の違いが生じる原因を解明するために、テアフラビン類の立体配座やエピカテキンのo-キノン体との相互作用について、DFT計算等により検討を行う。さらに、テアフラビン類の中性条件下における酸化反応についても検討する他、カテキン類とアスコルビン酸などの茶葉成分との酸化的縮合反応についても検討する。これまでの研究で得られたさまざまなカテキン酸化生成物について、抗酸化活性や酵素阻害活性など機能性の評価を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度に行う予定であった実験の一部を次年度に変更したため。 次年度分として請求した助成金と合わせて、研究に必要な物品費として使用する。
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