研究課題/領域番号 |
25870538
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
俵山 寛司 熊本大学, 生命科学研究部, 学術研究員 (20402414)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | Draxin / 軸索ガイダンス因子 / 海馬 / 神経新生 |
研究概要 |
Nestin陽性の神経幹細胞および神経細胞前駆体(神経幹/前駆体細胞)を選択的に蛍光標識することが可能なトランスジェニック・マウスを作製し、標識細胞の分化過程を経時的に追跡した。その結果、Draxin KOマウスでは、野生型に比べて、神経幹/前駆体細胞の分化が促進されることが明らかになった。この結果は、Draxinが神経細胞の分化を抑制することを示唆しているが、他方、成体海馬由来の神経幹/前駆体細胞を用いたin vitroの実験においては、Draxinタンパクにより神経細胞の分化が促進された。このように、in vitroおよびin vivoでの実験結果から推察されるDraxinの機能は相反するものであり、今後、どのような解釈が可能か検討する必要がある。 我々は、Draxin KOマウスにおいて生じるアポトーシスの増加、それに伴う歯状回顆粒細胞数の減少が、Draxin受容体の依存性受容体としての性質によるものであると予想した。そこで、現在までに報告されているDraxin受容体候補分子に関して、海馬での発現を調べたところ、DCC、Neogeninの2つの分子が歯状回顆粒細胞層周辺で発現していた。これらの分子がDraxin非存在下でその発現細胞に細胞死を引き起こす可能性について検討するため、単離した神経幹/前駆体細胞にDCC、Neogenin発現ベクターをトランスフェクションしたが、有意な細胞死の増加は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画書に挙げた実施予定の実験3項目のうち、1項目はすでに終了し、その他2項目についても結果が出始めている。よって研究は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Draxin受容体候補分子の中から、DCCおよびNeogeninを選択し、これらの分子が依存性受容体としての性質を示すかどうかin vitroで検証したが、結果はネガティブであった。他の受容体候補分子であるUnc5ファミリーも顆粒細胞系譜で発現していることから、今後、これらの分子に関しても検討を行う。in vitroの実験系では、細胞を様々な栄養物質を含む培地で培養するため、これらの物質が依存性受容体を強制発現させた細胞の細胞死を抑制している可能性がある。そこで様々なDraxin受容体をコードするレトロウイルスを作製したのち、直接海馬に注入することで強制発現させ、過剰な細胞死が誘導されるかどうか、in vivoレベルでも調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、Amaxa社の遺伝子導入装置を新規に購入し、各種Draxin受容体候補分子をコードする発現ベクターを海馬由来神経幹細胞に導入する予定であったが、デモ機を用いた予備実験では、解析を進めるのに十分な遺伝子導入効率が得られなかった。そこで、代替となるその他のトランスフェクション方法を探す必要があったため、in vitroでのトランスフェクション実験に関しては、計画どおりに実験を進めることができなかった。それにより次年度使用額が生じることになった。 効率よく海馬神経幹細胞に外来遺伝子を導入する方法を見出したので、昨年度中に行うことができなかったトランスフェクション実験の続きを今年度に行う予定である。昨年度の繰越金40万円は、この実験を実施するための消耗品に充てる。
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