研究実績の概要 |
我々は全身的な免疫抑制状態に陥らせることなく、免疫抑制を誘導する手法の開発に取り組んでおり、その手法としてES細胞から樹状細胞 (ES-DC)を分化誘導し利用する方法を開発している。 平成25年度において、糖尿病を自然発症するNODマウスと実験的自己免疫性脳脊髄炎 (EAE)を用いて、ES-DCの症状改善効果が認められたため、平成26年度ではES-DCの投与による免疫抑制あるいは免疫制御メカニズムについて検討した。ES-DCによる自己免疫疾患モデルマウス (NOD, EAE)の制御機構の解析として、ES-DCを投与したNOD、EAEマウスに対し、Th1, Th17, Treg細胞を中心としたT細胞分画の検討をフローサイトメトリーにて行ったところ、非投与群と比較して、ES-DC投与群ではTh1細胞の割合の低下が主に確認された。また責任病巣 (膵臓、脊髄)の病理学的な評価では、ES-DC投与群における責任病巣での炎症細胞浸潤の軽減が確認できた。 また、ES-DCの投与を行ったマウスが、全身的な免疫抑制状態になっていないか検証を行った。ES-DCを投与したマウスに外来抗原 (OVA)の免疫を行い、その後に回収した外来抗原特異的なT細胞の増殖応答が、ES-DC非投与群と比較して同程度に保たれているか検討したが、外来抗原OVAに対する免疫応答はES-DC投与に関係なく維持されていた。 以上のことから、ES-DCを投与することによって、全身的な免疫抑制状態に陥ることなく、 自己免疫疾患の症状が改善されることが示された。
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