研究課題
若手研究(B)
家族性アミロイドーシスポリニューロパチー(FAP)は、トランスサイレチン(TTR)遺伝子の変異により、末梢神経障害などでTTRがアミロイド線維化する代表的な遺伝性ニューロパチーである。しかし、同じ遺伝子変異でも患者の出身地により発症年齢や浸透率が大きく異なることが知られている。すなわち、集積地(熊本や長野)のFAP家系は発症年齢が20-30歳代と低く浸透率も高いが、非集積地のFAP家系では発症年齢が50-80歳代と高く、浸透率も低いため家族歴が明確でない場合が多い。本研究では、組織に沈着したアミロイドから検出される断片化TTRに着目し、集積地と非集積地のFAP家系でTTR断片化の出現に差があるかなど、本症の病態と断片化TTRが関与するか検証するとともに、TTR断片化の生じる機構をin vitroで解析した。非集積地FAP患者の組織からは断片化TTRが検出されたが、集積地FAP患者の組織からは断片化TTRが検出されない傾向が認められた。神経由来の細胞株にTTRアミロイドを加えた場合にTTRの断片化が生じた。TTRの断片化部位を解析したところ、トリプシンの切断部位と類似していた。siRNAを用いて、トリプシノーゲンの発現を抑制すると断片化TTRの生成も抑制された。また、試験管内で、トリプシンとTTRアミロイドを混合し、インキュベーションしたところ、細胞培養で観察されたものと類似したTTRの断片化が生じることが判明した。未変性のTTRとトリプシンをインキュベーションしても、TTRの断片化は検出されなかったことから、トリプシンによる断片化にはTTRのアミロイド化が必要であると考えられた。断片化TTRは本症の発症に関連していると考えられる。TTRの断片化はアミロイド線維形成後に生じ、トリプシンがTTR断片化に関与していると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
トランスサイレチンの断片化機構をin vitroの検討を中心に明らかになってきた。研究は当初の計画通りに進行している。
リコンビナント断片化TTR、断片化TTRに対する抗体を作成し、さらに詳細に解析を進める。また、臨床検体を用いた検討を行うことや、断片化TTRを用いた病態モデルを作成し、新規の治療法や診断法の開発を検討する。
作成中であるリコンビナント断片化TTRに対する抗体の作成が本年度中に完了しなかったため、次年度に使用する予定である。リコンビナント断片化TTRに対する抗体の作成に関して使用する予定である。
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