研究課題/領域番号 |
25870543
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
門松 毅 熊本大学, 生命科学研究部, 助教 (90555757)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 発現制御 / エピゲノム / 生活習慣病 / 癌 / ANGPTL2 |
研究概要 |
本研究の実績として、DNAメチル化によってANGPTL2発現レベルの低い骨肉腫細胞をマウスの脛骨に移植すると、がん細胞におけるTETファミリーなどのDNA脱メチル化経路関連遺伝子の発現が誘導され、ANGPTL2プロモーター領域のDNA脱メチル化が引き起こされることで、ANGPTL2発現が誘導されることを見出した。さらに、がん細胞を低酸素・低栄養といったがんの微小環境下で培養したところ、移植モデルと同様に、DNA脱メチル化経路関連遺伝子の発現誘導を認めた。以上より、がん微小環境によって、がん細胞に置けるANGPTL2のプロモーター領域の脱メチル化が引き起こされ、ANGPTL2の発現が誘導されるといったエピジェネティックなANGPTL2発現調節機構が明らかとなった。また、新たなANGPTL2によるがん転移促進機構として、がん細胞から分泌されたANGPTL2がintegrin α5β1/p38 MAPK/MMP経路を活性化することで、がん細胞の浸潤能を促進することを明らかにした。さらに、分泌されたANGPTL2タンパク質に全長型だけでなく、プロセシングされた切断型が存在すること、切断型ANGPTL2はがん転移促進作用を失っていることを見出し、その切断に関わる切断酵素としてTLL1を同定している。さらに、TLL1の発現は、種々のがん細胞において発現が抑制されていることから、TLL1によるANGPTL2の切断を促進することが、がん転移に対する新たな治療標的となる可能性を見出している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度では、当該年度の研究項目であるDNAメチル化によるANGPTL2発現制御機構の解析において、がんの微小環境によって、がん細胞におけるANGPTL2プロモーター領域のDNA脱メチル化が引き起こされ、ANGPTL2発現が誘導されるといったエピジェネティックなANGPTL2発現調節機構、integrin α5β1/p38 MAPK/MMP経路を介したANGPTL2のがん転移促進機構を明らかにした。また、ANGPTL2プロモーター領域のDNAメチル化レベルとH3K9me3、H3K27meおよびH3K27Acレベルとの相関も見出している。がん細胞においてANGPTL2発現誘導に関与するヒストン修飾および新規転写調節領域の同定に向け、ANGPTL2の発現レベルが高い膵がん細胞株と発現レベルが低い膵がん細胞株を用いてH3K4me1およびH3K9Acに対するChIPアッセイを行い、ANGPTL2発現レベルの低いがん細胞株に比べ発現レベルの高いがん細胞株において、エンハンサーと考えられる複数の領域を見出した。さらに、これらの領域を対象に、プロモーター領域との相互作用を解析するため、3C法による解析準備を進めているところである。以上より、本研究は当初の計画以上に進展しているものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度では、ANGPTL2の発現レベルが高い膵がん細胞株と発現レベルが低い膵がん細胞株を用いてH3K4me1およびH3K9Acに対するChIP-seq解析を行い、より詳細にANGPTL2発現誘導に関与するヒストン修飾および新規転写調節領域の解析を行う。また、3C法によるプロモーターとエンハンサーの相互作用解析を行うとともに、相互作用に寄与する転写因子などの制御因子をChIPアッセイやゲルシフトアッセイを用いて同定する。さらに、同定した制御因子を過剰発現またはノックダウンしたがん細胞を樹立し、リアルタイムPCRによりANGPTL2の発現を評価するとともに、免疫不全マウスへの移植実験を行い、当該制御因子によるANGPTL2発現とがん転移との関連を解析する。
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