研究実績の概要 |
研究代表者らのグループは、ヒトiPS細胞から免疫調整機能を持った樹状細胞および抗腫瘍効果を有するマクロファージへの分化誘導に成功していた。強力な抗腫瘍効果を発揮するように遺伝子改変したiPS細胞由来マクロファージ(iPS-MP)を用いる計画であった。これまでに得たデータにより、iPS-MP治療には大量の細胞数(マウス一匹あたり1回の治療で1千万個)を必要とすることがわかっていた。将来、汎用化治療として臨床応用を実現化するためには、安定した治療細胞の準備不可欠である。そこでヒトiPS細胞から分化誘導した骨髄系前駆細胞に、cMYC+BMI1/MDM2を導入して不死化し、iPS細胞由来ミエロイドライン(iPS-ML)を樹立。その後にマクロファージ(iPS-MP)や樹状細胞(iPS-DC)を誘導し、治療に用いる方略をとった。まずiPS-MLの段階で、IFN-αあるいはβといったメラノーマに対する抗腫瘍活性が証明されている遺伝子の導入を行った。それを用いてiPS-MPを作製し、メラノーマに対する抗腫瘍実験を行った。免疫不全マウスにヒトメラノーマ細胞を腹膜播種させた後、種々の遺伝子改変iPS-MPで治療する実験を行なった。結果としてIFN-αあるいはβ遺伝子導入iPS-MPは非常に強力な抗腫瘍効果を示した。さらに抗腫瘍メカニズムを解明を行った。その結果、IFN-αあるいはβの遺伝子導入したiPS-MPは、遺伝子導入していないiPS-MLに比べM1マクロファージと呼ばれる抗腫瘍に機能するタイプに変化することを初めて見出した。マイクロアレイ解析から見出した癌特異抗原(KIF20A, FOXM1)について、ヒトメラノーマ組織での発現を確認し、その機能解析を行なった。また血清マーカーとしてのmicroRNAについても検討し、miR-221が早期診断に有用なこと、6つのmiRの組み合わせ(miR-9, miR-145, miR-150, miR-155, miR-203,miR-205)が転移巣の検出に有用であることを報告した。
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