研究実績の概要 |
平成27年度は磁気センサーで検出するターゲットとして、酸化チタンにMnをドープした磁性ナノシートに関する研究を中心に行った。酸化チタンには紫外光照射による光触媒効果があるため、グラフェンと積層することにより、電荷中性点のシフトや移動度が向上する傾向が見られた。電界効果によるキャリア誘起強磁性効果を検出する目的で、バックゲート電圧の印加を行ったが、現時点では明確なキャリア制御や磁化の変化を観測することは出来なかった。酸化チタンナノシートのドープ量や欠陥制御が重要であると考えられるため、ナノシート作製手法の確立にも重点を置いて研究を進めた。 研究期間全体の成果としては、長方形型の磁性体のエッジ付近のわずかな磁化変化を高感度に検出することに成功し、Appl. Phys. Lett.誌(2013)に論文が掲載された。また、素子構造を工夫することにより、さらに微小な磁性体の磁化変化を検出できることを、実験及びシミュレーションの両面から実証し、Appl. Phys. Lett.誌(2014)に論文が掲載された。現在は、半導体二次元電子系から単層グラフェンへと材料の転換により、さらなる高感度化の実現を目指しているところである。 研究課題を進める過程で、「酸化チタンナノシート」という別の二次元材料との出会いがあり、世界的に見ても先駆的な研究成果をAppl. Phys. Lett.誌(2014,2015)に2件発表することが既に出来ている。酸化チタンナノシートを磁気センサーの研究に組み込んで、新たに採択された基盤(C)の研究を推進する。
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