研究課題/領域番号 |
25870549
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
井田 智章 東北大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (70570406)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 活性酸素 / 一酸化窒素 / レドックスシグナル / 8-Nitro-cGMP / 8-SH-cGMP / 活性イオウ分子種 / ポリサルファ |
研究概要 |
細胞内の活性酸素と一酸化窒素の産生に依存して、親電子性シグナル分子である8-nitro-guanosine 3',5'-cyclic monophosphate (8-nitro-cGMP)が生成することを質量分析法を用いて定量的に明らかにしてきた。最近、生体内において、硫化水素関連化合物と8-nitro-cGMPが反応して新規環状ヌクレオチドである8-SH-cGMPが生成することが分かってきたが、8-SH-cGMPの生体内レベルや生理機能などは未解明である。本研究課題では、8-SH-cGMP生体内動態の定量的解析をおこなうとともに8-SH-cGMPによる可逆的タンパク質翻訳後修飾を介したシグナル伝達機構の解明を目指した。 平成25年度では、LC-MS/MSと安定同位体希釈法を用いた8-SH-cGMPの定量的解析法を構築し、培養細胞やマウス各種組織における8-SH-cGMP生体内動態を定量的に解析することに成功した。さらに、8-SH-cGMP生成機構を検討する過程において、cystathionine beta-synthase (CBS)とcystathionine gamma-lyase (CSE)がシスチンを代謝し、システインのチオール基にイオウ原子を過剰に含むシステインパースルフィド・ポリスルフィドと呼ばれる活性イオウ分子種を生成することを明らかにした。この活性イオウ分子種と8-nitro-cGMPが反応し、非常に効率よく8-SH-cGMPが生成されることが示され、8-SH-cGMP生成機構を明らかにした。また、8-SH-cGMPによる可逆的タンパク質翻訳後修飾であるS-S-グアニル化タンパク質を特異的に検出するシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は当初計画していた安定同位体希釈法とLC-MS/MSを用いた8-nitro-cGMPと8-SH-cGMPの生体内動態の解析に成功した。さらに、8-SH-cGMP生成機構を検討する過程において、CBSやCSEを介して、各種ポリスルフィドが生成されることを明らかにした。このポリスフィドと8-nitro-cGMPの反応により、効率よく8-SH-cGMPが生成されることを明らかにした。また、タンパク質のシステイン残基にS-cGMPが付加するS-S-グアニル化タンパク質を特異的に検出する方法を確立することが出来た。このように、研究目的である8-SH-cGMP 生体内動態の定量的解析、生成機構の解明、8-SH-cGMP による可逆的タンパク質翻訳後修飾を介したシグナル伝達機構の解明について、ほぼ計画どおりの成果が得られており、おおむね順調に研究が進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
活性イオウ分子種と8-nitro-cGMP、8-SH-cGMP生成のより詳細な解析を行う予定である。また、研究開始当初、求核物質である8-SH-cGMPはジスルフィドなどのチオールの酸化体と反応しS-S-グアニル化を起こすと予想されたが、ポリチオール化タンパク質の存在により、8-nitro-cGMPとポリチオール化タンパク質との反応により、可逆的タンパク質翻訳後修飾であるS-S-グアニル化が生じることが示唆された。そこで、今後はタンパク質のシステイン残基と8-SH-cGMPによるS-S-グアニル化とともに、ポリチオール化タンパク質と8-nitro-cGMPによるS-S-グアニル化タンパク質に注目し、プロテオミクス手法を用いた網羅的解析により、細胞内のS-S-グアニル化標的タンパク質を同定していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、実験に使用する試薬、消耗品などの物品費が当初の予定よりも少ない額で目的を達成することができたため。 8-SH-cGMPによるS-S-グアニル化、ポリチオール化タンパク質と8-nitro-cGMPによるS-S-グアニル化タンパク質のプロテオミクス手法を用いた網羅的解析により、細胞内のS-S-グアニル化標的タンパク質の同定のための実験に関する試薬、消耗品などの物品費に使用する。また、研究成果を論文にまとめ投稿するための英文校正、論文投稿費用として使用する。
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