研究課題
近年、生体内において、8-ニトロ-cGMPが8-SH-cGMPに代謝されることが分かってきたが、その詳細な生成機構や細胞内レベル、生理機能などは不明である。本研究課題では、8-SH-cGMPの生体内動態の定量的解析と8-SH-cGMPによる可逆的タンパク質翻訳後修飾(S-S-グアニル化)を介したシグナル伝達機構の解明を目指した。本年度では、質量分析装置を用いた8-SH-cGMPの定量的解析法により、マウス各組織における8-SH-cGMP生成レベルを定量化した。ラットグリオーマC6細胞株を用いたリポ多糖とサイトカイン刺激により、処理時間依存的8-SH-cGMP生成動態を定量的に明らかにした。また、8-SH-cGMP生成機構を解析するなかで、生体内でシステインのチオール基が過イオウ化したシステインパースルフィドが高いレベルで生成されていることがわかり、これにより8-ニトロ-cGMPが8-SH-cGMPに代謝されることがわかった。さらに、タンパク質システイン残基も過イオウ化(タンパク質S-ポリチオール化)されていることがわかり、プロテオーム解析によりグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をはじめとする様々なS-ポリチオール化タンパク質を同定した。S-ポリチオール化モデルタンパク質として組換えGAPDHを用いて、8-ニトロ-cGMPによるS-S-グアニル化を解析した結果、S-S-グアニル化を特異的に同定し、その生成機構が示唆された。さらにS-S-グアニル化は還元剤により制御される可逆的翻訳後修飾であることがわかり、細胞内レドックスにより制御されることが示唆された。本研究の一部は、PNAS誌に掲載され(Ida T. et al: PNAS, 2014)、同誌のCommentaryやChemical Research in Toxicology誌のSpotlight等で取り上げられた他、科学論文データベースWeb of Scienceの高頻度引用文献およびホットペーパーに選ばれるなど世界的に注目を浴びている。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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