研究課題
若手研究(B)
全身性強皮症の硬化皮膚では、主に皮膚線維芽細胞が産生するI型コラーゲンの過剰な沈着が生じているが、その機序は不明である。本研究では、microRNA let-7aがこの過剰なI型コラーゲンに産生に関与しているか検討した。前実験にて、硬化皮膚よりmicroRNAを抽出し、網羅的にmicroRNAアレイを行った結果microRNA let-7aが全身性強皮症の組織で低下していることを見出している。この減少が皮膚線維芽細胞において生じることをreal-time PCR法やIn situ hybridization法で確認した。また血清中のlet-7a量についても検討し、全身性強皮症では硬化の広い患者でより血清let-7a量は減少していた。次にlet-7aが皮膚線維芽細胞において実際I型コラーゲン蛋白量を変化させうるのか検討した。合成したlet-7aを線維芽細胞に導入するとI型コラーゲン量は減少し、逆にlet-7aの阻害剤を導入するとI型コラーゲン量は増加した。本結果から強皮症の線維芽細胞におけるlet-7a低下が、過剰なコラーゲン産生に関与していると推測された。また強皮症の硬化皮膚でlet-7aを増やすことができれば硬化が改善するのではと推測し、ブレオマイシン硬化皮膚モデルで検討した。ブレオマイシンを局所注射することで誘導した硬化皮膚においてもlet-7aは減少していた。またアテロコラーゲンと合成let-7aを混合し、マウス腹腔内に注射すると、少なくとも3日間は皮膚におけるlet-7a量が増加することを見出した。このlet-7a腹腔内注射を行いながらブレオマイシン局所注射を行うと皮膚硬化は軽減していた。(Makino K, et al. J Immunol 2013)
1: 当初の計画以上に進展している
ヒト皮膚線維芽細胞を用いたmicroRNAについての実験はこれまでにも施行していた。そのためヒト皮膚線維芽細胞を用いたin vitroの実験を計画以上にすすめることができた。また細胞実験の後に予定していたマウスを用いた実験を、細胞実験と平行して行い計画を前倒しで遂行することができた。
全身性強皮症の皮膚線維芽細胞でlet-7aが低下する機序について、引き続き培養細胞を用いて検討していく。また全身性強皮症における皮膚硬化の病態解明のため、let-7a以外のメディエーターについてもmicroRNAに限定せずに実験を計画している。
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