初期方位の異なる3種類の純Zn単結晶に対して、室温でECAP(equal channel angular pressing)を施し、その変形組織を調査した。 試験片A:試験片Aの方位は、c軸が押出方向(ED)に対して垂直であり、ECAP中にc軸圧縮となり双晶が発生する方位である。試験片Aに対して、ECAPを施した結果、初期に試験片全体で{10-12}双晶が発生し、試験片全体で結晶粒が生じた。また、せん断域通過後の最終方位は、c軸がせん断方向に対して垂直に配向していた。 試験片B:試験片Bの方位は、c軸が試験片挿入方向(ND)に対して垂直な方位を有しており、ECAP中にc軸引張となり双晶が発生しない方位である。試験片Bに対して、ECAPを施した結果、せん断域通過前で底面すべりと二次錐面すべりが観察された。また、せん断域でキンク変形が生じた。せん断域通過後では、キンク変形またはマクロ的Shear Bandにより、せん断方向に細長く伸びた結晶粒が生じた。 試験片C:試験片Cの方位は、方位Aと方位Bの中間の方位であり、せん断方向に対して底面が平行な方位である。試験片Cに対してECAPを施した結果、底面すべりと{10-12}双晶が発生し、その後、試験片全体に結晶粒が生じた。せん断域通過後の最終方位は、c軸がせん断方向に対して垂直に配向していた。 以上の結果から、変形中に発生する{10-12}双晶は、その後の結晶粒微細化に大きな役割を果たしていることが明らかとなった。これは、前年度の純Mg単結晶の結果と一致した。しかしながら、双晶が発生しない試験片Bでは、キンク変形を生じることで、その界面に沿って再結晶が生じ、微細化することが明らかとなった。以上の結果から、同じhcp結晶でも、その変形挙動が大きく異なることで、その後の微細化メカニズムが大きく異なることが明らかとなった。
|