研究課題
本年度は主に、精子濃度および受精遺伝子型が受精率に与える影響に注目し、異なる精子密度下における受精率および、受精後の正常発生率を複数の個体間において室内実験においてあきらかにした。成熟したオニヒトデを、沖縄県恩納村で2015年7月6日に(雄6個体、雌4個体)、宮崎県大島では2015年8月10日に(雄12個体、雌2個体)をそれぞれ大量発生している集団から採集した。精子は濃度を約1.0×108個/mlから段階的に10倍ずつ4段階まで希釈し、卵を入れた容器に添加した。各精子濃度において、受精直後2時間以内に受精膜が形成されていた卵の割合(=受精率)および24時間後に正常発生が進み、元気に泳いでいる幼生の割合(=正常発生率)を実体顕微鏡で観察した。沖縄で採集した雄6個体のうち、3~4時間後に受精率を測定した結果、全ての個体において受精率の差は見られなかった。19時間後に正常発生率を観察した結果、雄の2個体では精子濃度が低くなるにしたがって正常発生率が高くなり、残り4個体はその逆の傾向にあった。精子濃度が高いほど正常発生率が低くなる2個体においては、高濃度の精子下において明らかに通常の発生とは異なる奇形の幼生が多く見られた。一方、宮崎では雄12個体のうち、8個体において精子濃度が高いほど受精率が高くなる傾向を持つ個体が見つかった。本研究の結果により、精子濃度が高いとき(大量発生時になりやすいと考えられる)に優位になる精子をもつ雄個体と、精子濃度が低いとき(平常時に起こりやすいと考えられる)に優位になる精子をもつ雄個体とが存在することが示唆された。実験で用いた個体に関し、これまでに得ている精子が卵を認識するタンパク質であるBindinの配列を同定したが、第2エクソンを含む800bp程度の限られた配列においては、受精相性と受精遺伝子型に相関はなかった。
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