研究課題/領域番号 |
25870565
|
研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
加来 昌典 宮崎大学, 工学部, 助教 (10425621)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 光プロセッシング / 微細プロセス / 光脱離 / 表面分析 |
研究実績の概要 |
本研究では,真空紫外・極端紫外光による光脱離現象を解析し,それを応用した物質極表面の分析技術を確立することを目的にしている.これまでに水素分子や酸素分子,および窒素などの単純な分子ついての光脱離現象の詳細が報告されているが,複雑な分子構造を有する有機化合物については明らかにされていない. 平成26年度は平成25年度に構築した光脱離質量分析装置を用いて,引き続き構造の似ているポリエチレンとポリ塩化ビニルについて実験を行った.ポリエチレン,ポリ塩化ビニル共に波長200 nm以下の真空紫外域において,光脱離による脱離種が検出された.ポチエチレンでは波長150 nmをピークとする質量数2の水素分子の脱離種が観測された.一方,ポリ塩化ビニルでは分子構造にC-H結合が含まれているにもかかわらず水素原子を含む脱離種は観測されず,塩素原子を含む脱離種が波長170 nm付近をピークとして検出された.これはポリ塩化ビニルの場合,C-H結合に比べ活性化エネルギーが低いC-Cl結合に真空紫外光子が選択的に作用したためだと考えられる.また構造内にポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンを含む共重合体を用いて光脱離分析を行ったところ,ポリ塩化ビニルの場合と比較して塩素を含む脱離種の信号が長波長側にシフトしており,構成する元素が同じであっても組成の違いにより脱離信号の波長依存性が異なることが観測された.これらの結果から,構成元素や組成等の僅かな差異によって検出される質量スペクトルの波長依存性が異なることがわかった. またサンプルによっては,測定を繰り返すことによってスペクトルに変化が生じることがわかった.これは測定する際の真空紫外光照射によってサンプルの表面状態が変化したためだと考えられる.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度に引き続き有機化合物を試料として用いて真空紫外光による光脱離に関するデータの蓄積を行った.化合物を構成する元素や組成等の僅かな違いによっても検出される質量スペクトルの波長依存性に差異が現れることがわかった.この結果は光脱離現象が表面分析に応用可能である事を示唆している.また新たな結果として測定回数によるスペクトルの変化が観測された.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に引き続き有機化合物の光脱離現象を解明し,表面分析技術に応用するために引き続き光脱離に関するデータに蓄積を行っていく.今年度,新たに測定を繰り返すことによって得られる光脱離スペクトルが異なる結果が得られた.これは真空紫外光照射によってサンプルの表面状態が変化したと考えられるため,今後,他の分析技術等も用いて真空紫外光照射によってどのような現象が生じているのかを解明していく予定である.
|