研究課題
MRSAサーベイランス疫学情報と整形外科患者由来保存MRSA菌株の遺伝子タイピングを解析し、菌の伝播経路および感染対策効果に関する研究を行った。当院整形外科では術前患者の鼻腔MRSA監視培養・除菌を行ってきたが、2008年から接触予防策強化と術後感染予防抗菌薬適正使用による感染対策バンドルを開始した。これら対策の効果についてレトロスペクティブに検証を行い、新規MRSA感染率は対策実施前が2.17% (29/1333)、実施後が0.97% (19/1966)と実施後で有意に低下した(p= .003)し、このアプローチが感染対策に有効であり、これら結果を英文誌へ投稿した。また1999年から2009年まで鼻腔保菌(95株)・感染症発症(87株)のMRSA保存菌株(計182株)を用い、パルスフィールド電気泳動法(PFGE)による遺伝子タイピングを行った。感染菌株はSCCmec II型が多いこと、SCCmec II型株では同一遺伝子パターンを示す複数の感染症発症株が見られた。SCCmec II型株は院内伝播につながるリスクが高いことが示唆されたが、その要因については今後の検討が必要である。PFGE法とPCRをもとにしたPOT法の2つの遺伝子タイピング法を整形外科症例を含むアウトブレイクが疑われる事例の感染菌株で比較を行い、POT法もPEGE法アウトブレイク判定と同等の有用性があり、これら結果を英文誌への投稿した。保菌者が除菌後にMRSA感染症を発症しているケースが見られ、整形外科に加え心臓血管外科等の症例を対象にMRSA保菌者のMRSA感染症発症例で、保菌・感染菌株でタイピングを行った。非除菌群では同一遺伝子株での発症例が多いのに対し、除菌群では異なる遺伝子株での発症例が多かった。除菌後の伝播予防も感染対策上重要であることが示唆された。
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