本研究では,高精度な形状計測手法を用いて計測した顔の形状データに基づき,顔の一部に短時間かつ微差な動きとして表れるとされている,微表情と呼ばれる現象を認識するための手法を研究・開発した.微表情は,動揺等の人間の内部状態の変化に応じて,表情の僅かな差異として出現するという報告があり,これを認識することができれば,機械による人間理解に有用な情報として活用できる. 本研究では,この微表情の表れる部位を実験的に特定し,簡易的な,顔形状情報を用いた人間の内部状態の推定試験を行い,その結果を検証した.具体的には,顔形状を高精度かつ高密度に計測した結果を用いて,人間の内部状態と連動した,微小かつ特定の部位に生じる運動を発見するための手法として,機械学習による顔の運動特徴の学習および認識手法を構築した. その結果,本研究で被験者に与えた課題に関して,高精度に顔の運動を記録したデータを用いることで,人間の内部状態と連動した特徴の現れる部位を定め,約75%の精度で,これを推定することができた.一方で,顔形状の計測における平均誤差が数mm,またフレームレートを20fpsに低下させた状態では,微表情の認識が困難であるという結果を得た.この結果から,微表情の実用的な認識には,顔形状の計測誤差1mm以下,100fps以上の高フレームレートが必要であるという結果を得た.
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