研究課題/領域番号 |
25870573
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
白井 こころ 琉球大学, 法文学部, 准教授 (80530211)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 健康の社会的決定要因 / ポジティブ心理 / ソーシャル・キャピタル / 社会疫学 / 沖縄 |
研究概要 |
本研究の目的は、社会関係資本とポジティブ心理要因の解析を中心に、健康の社会的決定要因の構造的メカニズムと生物学的メカニズムについて、検討することである。 本年度の主な成果として、刊行物としては5冊の書籍発行と、論文3報の報告が挙げられる。書籍は、社会関係資本(ソーシャル・キャピタル)と健康について、グローバルな視点でまとめた『Global perspectives on social capital and health』『ソーシャル・キャピタルと健康政策』『健康の社会的決定要因:疾患・状態別健康格差レビュー』、ならびに沖縄地域のローカルな視点でまとめた『ソーシャル・キャピタルと地域の力-沖縄から考える健康と長寿』『島嶼地域の新たな展望』において、社会関係資本を含む地域資源とポジティブ心理要因が、社会経済的な背景等と関連しながら、健康に影響する過程について、普遍性、固有性の両面から考察した。論文では、それぞれ職域における社会関係資本と健康の関係、地域における社会参加と健康の関係、ライフコースの視点から幼少期のSESと健康の関連を報告した。 フィールドにおける調査実施については、2010年度に実施したベースライン調査の、健診データならびに介護保険データによるアウトカム追跡を行い、次年度の追加調査のための調査準備ならびに、市町村との調整業務を行った。加えて、健診データの結合作業等を行う過程で、保健所の調整により国保健診者のデータと社保健診者のデータ結合を行い、地域全体の生活習慣病リスクの把握と、リスク集積地域についての検討を行った。国保・社保健診データの統合による地域のリスク把握は、県内では初めての成果であり、地域における健康の社会的決定要因解明のための一歩として、実態把握に資する資料を地域へ還元した。次年度は仮説検討のための追加調査の実施を進展させる計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、縦断データとしてベースライン時の質問票データと健診データならびに介護保険データとの結合作業を行った。また、当初予定していた調査データと国保健診データとの結合に加えて、社保健診者と国保健診者のデータ結合を別途行った。これにより、市町村全体の生活習慣病関連指標の状況を分析し、集団として地域住民の健康状態の実態把握をした結果を、地域へ還元した。国保・社保対象者のデータ統合は、県内では初めての試みであり、地域における健康の社会的決定要因の検討を行い、地域へ還元する当該研究の成果の一つと考えられる。加えて、追加調査の実施について、市町村との調整を行い、ストレスマーカーや炎症マーカー等の測定やその他の心理指標についても、次年度に当初予定よりも大規模な調査実施を、市町村の協力を得て行う事となった。研究計画の目的達成についておおむね予定通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、市町村と協力して追加調査の実施を行い、社会関係資本や社会経済的背景についての内容を含む質問票と栄養調査の実施に加え、オキシトシンホルモンやストレスマーカー等の心理要因についての実測を行う。H26年度は主に追加調査の実施と、データセットの構築、加えて基礎的分析の結果を報告して、学術研究としての進捗を図るとともに、地域に基礎結果を還元することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
調査実施計画について、縦断調査データの結合作業(健診データ・介護保険データ)については、予定通り進捗し、特に健診データの結合作業については、予定していた国保対象者の分析に加え、社会保険対象者の分析を統合して行う事が出来た。そのため、市町村での健康づくりに資する資料の提供を行う事が出来、H26年度以降の実施内容を先に実施できたともいえる。一方、新規の調査票配布回収の時期については、市町村側とH25年度中の実施に向けての調整業務を行ったが、最終的に調査票の配布回収の時期をH26年度にすることが市町村側のニーズとも合致し、円滑な調査実施となることが判断されたため、H26年度実施と変更した。加えて調査対象者の人数が、市町村側の協力により当初予定よりも増加することになった。そのため調査実施の予算を、H26年度に使用する必要が生じ、H25年度は支出を抑えて次年度へ繰り越し、H26年度に使用する計画とした。 繰り越した予算については、調査票配布回収費用、ならびにオキシトシン測定と他のストレス・マーカー(IL6、 NK活性、コルチゾール)の測定費用として使用する。 なお、調査実施について市町村の健診実施日程にあわせて、調査票の回収と採血・採尿等を行うため、実質的に当初予定よりも実測定日の回数を増やして測定する方法をとることとなる。そのため、調査員の費用にも予算を使用する。
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