本研究は,可能な限り心負荷を抑えつつ,筋力増強効果が得られるレジスタンストレーニングの運動負荷条件を見いだすことを目的とするものである.研究初年度は,(1)心室動脈整合関係(Ees/Ea),実効動脈エラスタンス(Ea),収縮期末エラスタンス(Ees)の非侵襲的な評価法の確立,(2)レジスタンス運動におけるの運動負荷条件を様々に設定し,心室-動脈整合関係(Ees/Ea)の変化を観察した.非侵襲的な評価を行うため,先行研究に準じて,心収縮期時間,頸動脈圧,および別途超音波法によって計測した左室容積の解析から,Ees/Ea,Ees,Eaの非侵襲的な計測システムを作成した.等尺性ハンドグリップ運動(IHG)を15%MVC,30%MVCで実施し,本システムにて解析した結果,反復性に行われる運動負荷条件(反復性IHG)下であれば,後負荷の上昇が緩徐であり,心室動脈整合関係を悪化させにくい可能性を見いだした.平成26年度では,より高い抵抗荷重(40%MVC)にて,IHGの運動様式(持続性IHG,反復性IHG)がEes/Ea,Ees,Eaへ及ぼす影響を観察した.これらの検討結果から,高い抵抗荷重下でのIHGにおいて,反復性に行われる運動負荷条件下であれば,後負荷の上昇が緩徐であり,心室動脈整合関係を悪化させにくいことが示唆された.Ees/Eaの変化に関係する生理学的因子を検討するために,平成27年度にはEes/Eaの変化における筋代謝受容器反射の影響を検討した.持続性IHG,反復性IHGを40%MVCの抵抗荷重にて施行し,運動後阻血(PEMI)によって筋代謝受容器反射の活性化の程度を両条件間で比較した.その結果,反復性IHGでは持続性IHGと比較してPEMI中の血圧,Eaは低く,また,Ees/Eaは高値で推移した.以上より,心室動脈整合関係の変化には筋代謝受容器反射が関与すると考えられた.
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