研究課題
サイトメガロウイルス(CMV)は線維芽細胞・マクロファージ・リンパ球・グリア細胞・神経細胞・副腎・膵島・血管内皮細胞・導管上皮細胞に感染できることが知られている。感染細胞指向性の大きく異なるCMVは異なる病気を起こす可能性がある。患者の尿から分離したCMVが、実際に肺炎やリンパ球増多の原因ウイルス株とは限らないともいえる。そのため臨床分離株の解析は極めて重要である。しかしながらCMV臨床分離株の増殖は非常に悪いため、BAC(Bacterial artificial chromosome)を用いた組換えウイルス作製に必要なウイルスDNAを量的に確保するのは容易ではない。本研究ではPCR法によりウイルスDNAの全領域を10-20kb毎に増幅し、Geneart high-order genetic assembly system(Life technologies社)を用いて酵母内で数断片分を再構築させることで、ウイルス増殖の遅い臨床分離株でも解析可能である系の構築を目指す。本法による大型DNAウイルスの遺伝子組換え株作製系の開発には、表現型が分かりやすくウイルス増殖が速いために解析が容易な単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)を用いた。抗ウイルス薬ソリブジンに感受性であるHSV-1 WT-R株と非感受性であるVR3株について、それぞれウイルスDNAの全領域を10-20kb毎に増幅し、酵母内で長断片として構築した。HSV-1 WT-Rのウイルス粒子とともにVR-3のDNA断片を導入したところ、一部の断片導入時に於いて薬剤耐性となった。現在再現性の確認と原因遺伝子特定に向けて導入断片の限定化を行っている。研究期間中にCMVの感染細胞指向性を決定づける原因遺伝子特定やその遺伝子領域に基づく型判別法開発までに至ることは出来なかった。しかしながら研究継続による本法の確立により、CMV臨床分離株の解析が進むことが期待される。
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