免疫毒素イムノトキシンはヒトインターロイキン2受容体αサブユニット(hIL-2Rα)モノクローナル抗体の可変部位に緑膿菌体外毒素を結合した融合タンパク質であり、hIL-2Rαを発現する細胞に特異的に結合して細胞死を誘導する。これまではhIL-2Rαを発現させたげっ歯類の神経細胞に対してイムノトキシンが用いられてきたが、hIL-2Rαと配列が近いサルの場合では内在性のIL-2Rαへ影響する可能性があった。そこで霊長類へのイムノトキシン細胞標的法の適用を目指し、霊長類とはアミノ酸配列を大きく異にするマウスIL-2Rα(mIL-2Rα)に対するイムノトキシンを開発し、霊長類における特定神経回路の行動機能に対する役割解明を本研究の目的とし、 (1)新型イムノトキシンの開発、(2)新型イムノトキシンの検定、(3)生体内におけるイムノトキシンの活性の確認を計画した。 ハイブリドーマ3クローンから抗体可変部位をクローニング、緑膿菌毒素との融合タンパク質を大腸菌で発現させることを試みた。発現系の改善や立体構造の改良などを経て、発現量を高める事には成功した。しかしながら、3クローンはいずれもmIL-2Rαに対する特異性が低いものであった。最終年度では、別なハイブリドーマを入手することを検討しつつ、同時に抗体産生能力が高いウサギへ免疫し、ウサギモノクローナル抗体の配列取得も目指した。まず、ウサギへ免疫する抗原タンパクの取得を行った。抗原とするmIL-2Rαの細胞外ドメインは、当初は発現量が上がらず、ほとんど収量が得られなかった。しかし、発現ベクターや培養系などの発現の条件を検討し、最適な条件を見いだした。年度内にウサギモノクローナル抗体の配列取得までには至らなかったものの、これにより質の高い新型イムノトキシンの作製が可能となり、霊長類の特定神経回路の機能解明に大きく寄与できると期待される。
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