大腸癌など固形癌において糖鎖は臨床的・生物学的に極めて重要であり、CA19-9をはじめとしてモノクローナル抗体により認識される糖鎖構造の一部が実臨床で腫瘍マーカーとして利用されている。しかし糖鎖自体はDNAに直接コードされず多数の糖転移酵素群により合成され細胞表面で複雑な分枝構造をとるため解析は容易でなく、研究途上であり無限の可能性を持つ分野である。 本研究の目的は複数の独立した大腸癌の網羅的遺伝子発現データセットから、臨床的意義のある糖鎖遺伝子群を同定しその発現に基づく予後予測マーカーの確立と臨床応用に向けた多段階の検証を行うこと、それら糖鎖遺伝子を調節するマイクロRNAを同定しその生物学的機能を解析すること、さらに遺伝子レベルからタンパク・酵素・糖鎖レベルへ、多層的に細胞機能研究と臨床関連研究を展開することである。 複数の網羅的データを集積し約190の糖鎖関連酵素遺伝子をプロファイリングすることで、15の糖鎖関連酵素遺伝子を抽出した。それらの遺伝子によるクラスタリングにより大腸癌をサブタイピングできること、またそれらの新規サブタイプが既知のゲノム異常に関連することを解明した。また特定のフコシル基転移酵素やN-acetylgalactosaminyltransferase発現レベルがこれらのサブタイプを特徴づけていると考えており、大腸癌組織におけるタンパクレベルでの発現、細胞株を用いた機能解析を進めている。
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