研究課題
若手研究(B)
本年度は、申請書の計画に従い、自閉症スペクトラム障害(以下ASD)と統合失調症において、大脳皮質正中部構造に着目し、それぞれ自己に関わるオフライン処理の異常を、脳機能画像研究により検討した。ASDに関しては、成人当事者26名を対象として機能的MRI(以下fMRI)データ収集を完了し、24名の健常被験者と比較した。解析の結果、行動データでは、ASD当事者は対照群と比較して、自己に対して否定的な判断をする傾向がみられた。また、fMRIデータ解析では、大脳皮質正中部構造の前部において、ASD当事者の脳活動が有意に低下している領域を観察した。また、自己参照判断において、他者の視点を導入するなど、複雑な社会課題を施行した際、ASDと定型対照群では活動が有意に異なる領域が同じく大脳皮質正中部構造においてみられた。この予備的結果は、平成26年度の国際学会で発表予定である(The 20th Annual Meeting of the Organization for Human Brain Mapping、紀要を提出済み)。統合失調症については、現在実験参加者を募集し、行動研究をはじめ、予備的研究を進めている。ASDに使用した課題は言語的に複雑なため、昭和大学烏山病院の共同研究者とともに、認知能力が低下した統合失調症患者において遂行可能となるように単純化した課題を作成した。また、次年度以降に開始予定である、自己に関するオンライン処理の課題の選定を開始した。自己に関するオンライン処理課題には、現在のところ、当初の申請書の計画どおり、情動活動にともなう自律神経系の測定を計画しており、その計測システムの構築のための準備をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
成人ASD当事者のデータに関して収集を完了しており、予備的検討をおこなったところ、活動部位や健常対照群との比較において、妥当な結果が得られている。今後解析を進めることで、十分論文化できる結果と思われる。
平成25年度にASDを対象としたfMRI実験を、簡略化した形で統合失調症にも適用する。さらに、自己のオンライン的処理に関する研究を推進するため、課題の選定とシステム構築に必要な物品の準備を本年度の前半で完了し、後半でデータ収集をおこなう。
今年度のデータはfMRIデータだけに限定したため、データ解析のための研究環境は人員、物品ともにほぼ現状の者で対応できたため。もし研究が自律神経系データ測定にまで進展した場合、研究補助員の採用や計算機の購入が必要であった。とりためたデータの解析を推進するため、データ処理補助として研究補助員を採用する。また、fMRIデータ用計算機と解析ソフト、さらに自律神経データ測定装置を購入する予定である。
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最新医学
巻: 68 ページ: 110,119