研究課題
平成26年度は、前年度までに収集した成人高機能自閉症スペクトラム障害(以下ASD)当事者が自己に関するオフライン課題を行なっているときのfMRI活動データの解析を推進した。具体的には、ASD群26名、定型発達対照群24名のfMRIデータに加え、同一実験参加者から安静状態脳活動の測定を追加し、自己のオフライン課題と安静状態脳活動の関係性を調べた。解析手法としては、複数の心理課題条件の脳活動の連動をデータ駆動的に抽出するjoint独立成分分析(independent component analysis, 以下ICA)を適用した。自己のオフライン処理における大脳皮質正中部構造や下頭頂回側部を伴う活動と安静状態におけるデフォルトモードネットワークは空間的に類似したパターンを示すことが知られているが、joint ICAを用いた解析においても、データ駆動的に類似したパターンが抽出され、因子負荷において統計的に有意な群間差が認められる活動パターンを同定した。この結果について、2つの国際学会でポスターと口演発表をおこなった(The 20th Annual Meeting of the Organization for Human Brain Mapping, Hamburg, Germany、21st World Conference of IACAPAP, Durban, South Africa)。自己のオンライン課題については、fMRI環境下で測定可能な自律神経系測定装置(BIOPAC)を使用して、脈波と皮膚電気抵抗を安静状態において測定する作業を行なった。この作業により、次年度から自己のオンライン処理にともなう自律神経活動計測と脳活動が同時に計測できる実験環境とした。
3: やや遅れている
使用を予定していた実験機材の導入が遅れたためである。ASDの自己のオフライン処理に関する研究は、データ数・解析ともに本年度内に予定通り進める事が出来た。自己のオフライン処理に関する研究は、別予算で導入が予定されていたfMRI環境下で使用可能な自律神経系装置の導入が遅延したため、実験環境の整備の開始が遅れた。従って当初の予定より1年本課題を延長することで、目標の実験データ収集を遂行する必要がある。
平成26年度において実験課題、測定環境の整備は完了したため、統合失調症を含めてデータ収集に重点を置いて推進する。予算についても、自律神経系データの解析には専門の研究補助員を採用してスピード化を図る。
本研究の重要な要素である、fMRI環境下で行なう脈波・皮膚電気抵抗の測定が、測定機材の導入が遅延したことにより、機器のセットアップの開始が遅れたため。当初の予定では、測定機材の導入に合わせて実験補助員を採用する予定であった。
fMRI環境において自律神経系データの測定とノイズ除去等の信号処理の経験を持つ実験補助員を採用する。さらに、実験協力者のリクルートを推進するための実験補助員を採用する。従って、予算は主に人件費・謝金に使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) 図書 (1件)
Neuroimage: Clinical
巻: 7 ページ: 155,169
10.1016/j.nicl.2014.11.019.