研究課題/領域番号 |
25870593
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
大槻 茂実 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 助教 (20589022)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 多文化共生 / 社会的凝集性 / 異質性 / ソーシャル・キャピタル / 接触仮説 / 社会階層 / 地域参加 / トライアンギュレーション |
研究概要 |
本研究は、多文化共生についての人々の態度に焦点を合わせ、社会的凝集性、社会階層論といった隣接領域と多文化共生論の接合を行うことを目的としている。具体的には以下の点から研究を進める。第一に日本的な特色に基づいた社会的凝集性(social cohesion)の指標化を理論・実証の両面から行う。第二に、多文化共生論を社会的凝集性と社会階層論の視点から再定式化する。また、特に実査の段階では、日本人に対する調査に加えて、外国人に対しても社会調査を行い国際社会における多文化共生・階層システムのありようを検討する。 平成25年度においては多文化共生に関する先行研究・調査に関する情報収集として社会的凝集性・多文化共生についての文献収集と平成26年度以降の計量的調査と質的調査の準備を重点的に進めることを計画した。実施状況としては概ね計画通りであると考えられる。特に多文化共生論の隣接領域として近年のソーシャル・キャピタル論、都市郊外論、社会階層論における知見を俯瞰することで、平成26年度以降に計画している実査に向けての調査計画・分析枠組みの精緻化を進めることができたと考える。 また平成25年度は先行研究・調査に関する情報収集のほかに、平成26年度以降に行う実査に向けて調査対象地域の選定作業を進めた。具体的には自治体職員、NPO/ボランティア参加者など本調査でデプスインタビューを企図している対象者から得られた情報や官公庁データをもとに、調査対象地の特定化と計量的調査におけるサンプリングについて検討を進めた。その過程において、計量的調査に用いる調査票のワーディング・質問項目の検討・修正も行っている。以上の作業結果をもとに平成26年度以降に実査を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は以下の通りである。高度産業化、グローバル化の中で、欧米諸国・EU・世界銀行などでは、人々の関係性についての関心が高まっている。そのなかで、長期滞在する在日外国人とはどのような共生社会を目指すべきであるのか。社会的合意を早急かつ慎重に模索しなければならない段階であるといえる。本研究は、多文化共生についての人々の態度に焦点を合わせ、社会的凝集性、社会階層論といった隣接領域と多文化共生論の接合を行う。具体的には、第一に日本的な特色に基づいた社会的凝集性(social cohesion)の指標化を理論・実証の両面から行う。第二に、多文化共生論を社会的凝集性と社会階層論の視点から再定式化する。また、特に実査の段階では、日本人、外国人に対して計量的・質的調査を行うことで知見のトライアンギュレーションを行う。 現在までの達成度は概ね計画通りであると考える。特に先行研究における知見の整理については、多文化共生論の隣接領域として近年のソーシャル・キャピタル論、都市郊外論、社会階層論における知見を俯瞰することで、平成26年度以降に計画している実査に向けての調査計画・分析枠組みの精緻化を進めることができたと考える。また、実査に向けての準備としては調査対象者との関係構築を進めるとともに、学会・研究会における発表・議論内容を加味し、調査対象地域の選定について検討を進めることが出来た。当初の予定通り、これまでの議論内容、サンプリング可能性、予算などの点から対象地域の確定を行うとともに、実査を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画としては、これまでの知見の整理をもとに実査を進めることを予定している。特に実査においては計量的調査による知見の一般化を図るとともに、質的調査を通して知見の深化をすすめる。したがって、本研究においては計量的調査と質的調査の双方が可能となる地域を調査対象地域として選定する必要がある。 また、上記のトライアンギュレーションが可能となるような調査設計である必要があることに加え、本研究では対象地域内(自治体内)における分散を留意した分析が可能となるような調査設計を行う必要がある。これは平成25年度におけるパイロット調査での経験から、同じ対象地域(自治体)内においても外国人の集住状況や日本人との交流状況が一定ではなく分散が大きいことが判明したためである。研究計画当初は暫定的に異なる地域間(自治体間)における比較調査のみを計画していたが、学会・研究会での発表・議論を通して、地域内の分散を留意した調査・分析を進めることより問題感心の追究を進めることができると考えるに至った。したがって、本研究は当初の計画を発展的に修整することとした。調査対象地域の選定・区分けについては理論的位置づけをもとに進めるとともに、サンプルサイズ・サンプリングリスト台帳の閲覧可能性・予算などを鑑み最終的な選定を進めている。したがって、当初の計画通り実査は実地される見通しである。特にインタビュー調査においては調査対象者との関係構築が重要となるが、日本人、外国人を合わせて合計で20-30名程度を想定しているが、ほぼ対象者に対してヒアリング調査の了承を得ることが出来た。この点から、質的調査についても当初の計画通り、調査の実現性は高いと想定される。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では平成26年度以降に大規模調査を計画している。その際には、サンプリングリストとして選挙人名簿ではなく、住民基本台帳を使用する可能性が平成25年度における資料収集・聞き取り調査を通して高まった。また、昨今の多くの社会調査にみられる回収率の低下を鑑みた結果、調査対象者への督促状の送付に加え、調査対象者への挨拶状や調査票の再送などより細やかな対応をする必要性があると研究計画の申請当初よりも考えるに至った。以上の点から、平成25年度における使用額の一部を大規模調査を行う平成26年度以降の調査費用に充てることとした。 次年度使用額は平成26年度以降の計量的調査の費用に充てる。具体的には調査対象地域(自治体)における住民基本台帳の閲覧・転機費用に充て、その上で未回収票が発生した場合の調査対象者への調査票の再送費用に充てることを計画している。調査対象地域の選定は、サンプリング費用・交通費・調査票の郵送費・回収費などすべての予算とかかわるので、理論的必然性に加え、研究予算など総合的見地から選定作業を進めている。
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