高度産業化、グローバル化の中で、欧米諸国・EU・世界銀行などでは、人々の関係性についての関心が高まっている。そうした中で、日本社会は外国人とはどのような共生社会を目指すべきであるのか。社会的合意を早急かつ慎重に模索しなければならない段階であるといえるが、残念ながら、いまだ明確な理念が共有されているわけではない。 このような背景の中、本研究は、多文化共生についての人々の態度に焦点を合わせ、日本的な特色に基づいた社会的凝集性の観点から多文化共生概念を検討し、多文化共生論と社会階層論をといった隣接領域との接合を行った。具体的には、東京都羽村市における日本人住民と外国人住民に対して、多文化共生意識についての計量的調査と質的調査を行った。日本人を対象とした計量的調査については平成27年度に羽村市に居住する日本人住民(20歳-79歳)を母集団とし、ランダムサンプリングにもとづいて6000サンプルを抽出し、質問紙を用いた郵送形式の量的調査を行った。外国人を対象とした計量的調査については、平成27年度に東京都羽村市に居住する外国人(20歳以上)を対象として郵送形式の質問紙調査を行った。また、質的調査については研究期間中に住民・市職員を対象とした聞き取り調査を行った。住民に対しては総計で14ケースに対して聞き取り調査を行った。 今後はデータ分析の結果を積極的に公表していく予定である。直近ではすでに2015年度に質的調査データの内容を博士論文(『多文化共生社会の現実と展望』首都大学東京)の分析結果として公表した。また、本研究は国際的な内容に富むことから、国外への情報発信も望まれるが、2016年8月開催されるAmerican Sociological Association学会(シアトル)で本研究の知見についての学術発表を行う予定である。以上のように、本研究は概ね計画通り進行したと判断される。
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