研究課題/領域番号 |
25870600
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
金 亜伊 横浜市立大学, 総合科学部, 准教授 (00633851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水圧破砕 / 誘発地震 / シェールガス / 応力降下量 / 剪断破壊 / 体積変化 / 地震のメカニズム / 流体注入 |
研究概要 |
現在シェールガス開発などの資源開発現場において水圧破砕はルーチン的に観測され,微小地震の広がりをリアルタイムで観察する事が可能である.しかし,これらの地震が貯留槽内でガスの流路となるフラクチャーの形成,成長とどのような関係があるのかは誘発地震のメカニズムがわからないために,詳細は不明である.誘発地震のメカニズムは,その発生理由から主に以下の二つであると考えられる.1. 体積変化を伴う、2. 剪断破壊ともしくはその両方であると考えられる。体積変化が伴う場合は体積増加(減少)により孔隙率の上昇(低下)を伴う.これは流体の流れをリアルタイムで把握することができ,フラクチャーの進行を制御する事が可能である.剪断破壊の場合は間隙水圧の上昇により既存の小断層がすべった結果で,発震機構から貯留層内の応力軸の変化や,断層同士の相互関係を調べる事が可能である. 昨年度はアメリカ、テキサス州のCotton Valleyの水圧破砕データを用い、微小地震の応力降下量を見積もる事によりこれらのメカニズムを明らかにすることを試みた。見積もられた応力降下量は流体により誘発された自然地震同様に比較的低く見積もられが、目立った特徴として応力降下量が同じマグニチュードでも断層の走行方向によって異なっていた。最大水平応力軸に低角な走行を持つ地震は特に低く見積もられた。これは水圧破砕により貯留層の応力状態が変化すると共に、流体が既存の断層に流れ込み有効応力を下げ、破壊にいたるというモデルで説明できる可能性が考えられる。 また、より多くのデータを得るためにニューラルネットワークを用いた誘発地震(微小地震、低周波地震)を検出方法を開発し、現在数値テストが終了し、観測データ(Newberry, Cotton Vally)で検証しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
25年度の研究計画としては1.多段階フラクチャリングで観測されたデータの入手,整理,震源再決定, 2. 連続波形データから低周波地震の検出を試みる, 3. 経験的グリーン関数を用いた震源スペクトル解析としていたが、1については先方(Schlumberger)の権利の関係上データを入手することが困難となった.その代わりLivermor National LabolatoryのDennise Templeton博士よりNewberryの水圧誘発地震の観測データを提供していただけることとなった.それらはすでに詳細な震源再決定がされており、低周波地震と思われる地震もいくつか観測した.3についてはCotton Valleyの水圧破砕データを持ちい、応力降下量を見積もり誘発地震のメカニズムに関する一つのモデルを提案することができ、現在成果をまとめて論文を執筆中である.
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今後の研究の推進方策 |
今後は本年度提案したモデルを裏付ける検証をしたいと考える。異常に低い応力降下量が推定されたことは貯留槽内の差応力が一旦小さくなったあと、有効応力が低下したと考えられる。この場合は最小応力軸が、負となり体積の増加が示唆される。今後は観測された既知の応力値を用いて岩石力学的な知識と共にそのモデルを説明できるかを検証する。 上の欄でも述べたが、Schlumbergerより多段階フラクチャリングで観測されたデータの入手が困難となった。代替案としてLivermor National LabolatoryのDennise Templeton博士よりNewberryの水圧誘発地震の観測データを提供していただけることとなった.今後はこのデータと現在解析中のCotton Valleyのデータ、カリフォルニア州のGeysersのデータを用いて解析を進めて行く。 ニューラルネットワークの地震検出プログラムを既知のデータでテストし、十分な検出能力が確認できてから連続波形データに応用する。
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