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2013 年度 実施状況報告書

芳香族アミノ酸「ドーパ」を介した植物-微生物の根圏共栄メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 25870604
研究種目

若手研究(B)

研究機関石川県立大学

研究代表者

小柳 喬  石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20535041)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードPseudomonas属 / 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 / ドーパ脱炭酸酵素 / ビタミンB6酵素 / アレロケミカル / アレロパシー / 根圏細菌
研究概要

Pseudomonas 属細菌のもつ芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 (AADC) の活性が、芳香族アミノ酸であるドーパの存在下で強く誘導される情報をもとに、当該細菌の遺伝子発現を網羅的に解析した。P. putida KT2440 株のトータル RNA を抽出して逆転写を行って cDNA 化を行い、カスタム DNA チップを作成して DNA マイクロアレイに供した。その結果、AADC の構造遺伝子発現量は 1 mM ドーパ存在下において予想通り 50 倍程度上昇しており、全遺伝子中最も高い発現向上であることが明らかになった。このことから、環境中にドーパが存在する場合に本酵素活性によってドーパミンに変換することが何らかの生理的意義に繋がっている可能性が示唆された。本結果は、アレロケミカルとして生長抑制をもたらす根圏域のドーパを解毒する働きを本菌株が有しているという、本研究における予想と合致するものである。また、NAD(P)H脱水素酵素の発現が14~15倍に上がっているほか、azoreductase の発現量も10~14倍に上昇しており、双方とも NAD(P)H の酸化還元に関わる酵素であることから、何らかの電子受容体を介した酸化還元反応が細胞内において亢進していることも示唆された。これらの結果を精密化することにより、ドーパの代謝機序とその生理的意義を明らかにでき、根圏におけるドーパを仲立ちとした植物-微生物間相互作用の一端を明らかにできると考えている。現在、P. putida において AADC の欠損株を作成中であるほか、遺伝子クラスター中の周辺遺伝子である PP_2554 (putative 4-hydroxyphenylpyruvate dioxigenase) のクローニングも終了したところである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AADC の生体機能への関与を精査するための DNA マイクロアレイ解析を予定通り終了した。研究開始当初は、ドーパ天下による細胞走化性の変化や、バイオフィルム形成関連の遺伝子発現変化が起こることも予想していたが、それらの変化はマイクロアレイの結果確認されなかった。しかし、上記のようにNAD(P)H関連の酸化還元酵素に一括した発現変化がみられるなど、細胞内の生理状態がドAADC発現量向上に伴って明らかに変化を示唆する結果が得られている。AADC 欠損株の作製は現在試みているところで終了していないが、周辺遺伝子の取得・クローニングも同時に進行しており、研究進展状況は順調である。

今後の研究の推進方策

今後は、実際に AADC の機能が植物根圏における生物間相互作用に関わっていることを証明していく必要がある。そのために、一刻も早く AADC 遺伝子欠損株を完成させて機能評価を行う必要があるほか、実際にマメ科植物の根圏において AADC 保持型の P.putida が優勢化するか否かを確かめる必要がある。当初計画に大きな変更は現時点では無いが、遺伝子機能評価と生態的解析を同時に鋭意進行していき、両方から得られる知見をもとに分子機能面・細胞生理面から包括的に現象基盤の把握を行っていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2013 その他

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Improvement of Reticuline Productivity from Dopamine by Using Engineered Escherichia coli.2013

    • 著者名/発表者名
      Kim, J.S., Nakagawa, A., Yamazaki, Y., Matsumura, E., Koyanagi, T., Minami, H., Katayama, T., Sato, F., Kumagai, H.
    • 雑誌名

      Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry

      巻: 77 ページ: 2166-2168

    • DOI

      10.1271/bbb.130552

    • 査読あり
  • [学会発表] テバインの発酵生産に向けたサルタリジンの微生物発酵

    • 著者名/発表者名
      中川明・松村栄太郎・小栁喬・片山高嶺・佐藤文彦・南博道
    • 学会等名
      第6回北陸合同バイオシンポジウム
    • 発表場所
      国民宿舎能登小牧台(石川・七尾)
  • [学会発表] バクテリアのドーパ脱炭酸酵素~根圏細菌 Pseudomonas putida における役割を探る~

    • 著者名/発表者名
      小栁喬・中川明・桜間晴子・山本恵子・桜井直文・高木幸信・南博道・片山高嶺・熊谷英彦
    • 学会等名
      平成 25 年度植物感染生理談話会
    • 発表場所
      北陸粟津温泉・法師(石川・小松)
  • [学会発表] モルヒネの生成中間体であるサルタリジンの微生物生産

    • 著者名/発表者名
      中川明・松村栄太郎・小栁喬・片山高嶺・山本憲二・熊谷英彦・佐藤文彦・南博道
    • 学会等名
      日本農芸化学会2014年度大会
    • 発表場所
      明治大学・生田キャンパス(神奈川・川崎)

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公開日: 2015-05-28  

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