研究課題/領域番号 |
25870604
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
小柳 喬 石川県立大学, 生物資源環境学部, 准教授 (20535041)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | Pseudomonas属 / 芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 / ドーパ脱炭酸酵素 / ビタミンB6酵素 / アレロケミカル / アレロパシー / 根圏細菌 |
研究実績の概要 |
Pseudomonas 属細菌が保持する芳香族アミノ酸脱炭酸酵素 (AADC) の遺伝子周辺の転写単位についての解析を行った。当初、AADC 上流に存在する2つの遺伝子(LysR型転写調節因子および機能未知タンパク質)と本遺伝子が同一の転写単位 (オペロン) を形成していると考えていたが、解析の結果、AADC 遺伝子のみが単独で発現していることが判明した。遺伝子上流側にはプロモーター様配列は存在しないにもかかわらず本遺伝子のみが単独の転写単位となっていることから、独自の未知転写因子がドーパ存在下における誘導発現を担っていることが示唆された。そこで、AADC 遺伝子のプロモーターと転写調節領域が存在すると考えられる遺伝子上流域約 600 bp を大腸菌由来β-ガラクトシダーゼ遺伝子 (lacZ) と連結してレポーター遺伝子を構築し、大腸菌内で該転写因子をPseudomonasゲノムライブラリー中から同定するスクリーニング系を現在作成している。レポーター遺伝子を保持するプラスミドとともにゲノムライブラリを大腸菌に共導入することによって、レポーター活性を指標に転写因子を同定、ドーパ誘導の詳細機序の解明を行う予定である。また、同様の活性を持つ他の細菌の AADC (Enterococcus 属由来) についてはドーパによる発現誘導が起こらないことも確認しており、AADC のドーパ誘導が Pseudomonas 属細菌に特異的な現象であることを示唆する結果も取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度に行ったDNAマイクロアレイの結果をもとに、さらに AADC の遺伝子レベルでの転写活性化を詳細に解析し、本遺伝子が未知の転写因子によって発現調節されることを示唆する結果を得た。また、他の細菌の AADC の発現様式も合わせて解析することで、AADC のドーパ誘導が Psedomonas において特異的であることを示す結果も得られた。しかし、当初完了予定であったAADC 欠損株の作製は難航し本年度完了することができなかった。そのため、植物根圏における宿主-細菌間相互作用の解明段階までは現在至っておらず、計画からはやや遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
大きな研究遂行計画の変更はないが、今後は本年度までに完了できていない AADC 欠損株作製について実験を鋭意続行し、早急に当該株取得を行うことを第一の目標とする。欠損株が得られれば、速やかに植物根圏への野生株及び欠損株の定着能を調査する実験を遂行する。また、AADC 遺伝子クラスターの存在意義を明らかにする研究を続行し、AADC のドーパ誘導の基盤となる転写因子の解明および周辺遺伝子産物によって行われるドーパ代謝の様式解明を鋭意行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は AADC 欠損株の取得を完了、その後欠損株および野生株の植物根圏への定着能の差異等を評価し、それに際した菌叢解析や代謝物解析のための費用も一部予算中に見込んでいたが、欠損株の取得に未だ成功していないため解析を充分に進行することができなかった。そのため、次年度に当該部分の解析費用を持ちこすこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の通り次年度は一刻も早くAADC欠損株取得を完了し、根圏への接種による菌叢変化の解析、ドーパ・ドーパミンを含む代謝物組成の解析を遂行する計画である。このための微生物遺伝子解析費用等として充当する予定である。また、解析に際して付随的に必要となる遺伝子抽出キット、遺伝子増幅用酵素類、代謝物解析用試薬類等にも使用する予定である。
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