研究課題/領域番号 |
25870606
|
研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
立松 憲次郎 岐阜薬科大学, 薬学部, 助教 (70381720)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 脂肪酸 / 脳卒中 / 脂質栄養 |
研究実績の概要 |
脳卒中易発症性高血圧ラット(SHRSP)に菜種油をはじめとした特定の油脂を摂取させると、ラットの寿命が著しく短縮する。本研究では、SHRSPの寿命短縮を示す原因として、油脂中の18:1脂肪酸含量に着目し、動物実験を中心に検討を行っている。当該年度では、以下の点について調べた。 1.菜種油による寿命短縮の原因を探索するために、各種臓器の遺伝子発現並びに酵素活性を調べた。菜種油を含む実験飼料を7週間摂取したSHRSPは、寿命短縮を示さないコントロールである大豆油を摂取した群に比べて、肝臓において脂質代謝並びにエネルギー代謝に関連する酵素の発現、活性に大きな変化が見られた。しかし、これらの変化はSHRSPの病態改善作用を示す完全水添菜種油(FHCO)においても同様の変化が認められたことから、寿命短縮とは独立した変化と推測された。 2.各臓器における組織学的変化を検討した結果、菜種油を摂取した群では脳における出血の他に、腎障害の進行、脾臓における髄外造血などの特徴が観察された。これらの変化はFHCO摂取群では観察されなかったことから、腎障害を原因とする高血圧の亢進とともに、造血組織における変化もSHRSPの病態進行に大きくかかわる可能性が示唆された。 以上の結果より、菜種油の摂取によるSHRSPへの影響は腎障害と造血障害の両方に影響を及ぼす可能性が示唆された。一方で、7週間摂取の条件では脂質・エネルギー代謝に関連する酵素は病態進行と相関して変化しないことから、油脂摂取による病態の進行には脂質代謝は大きくは影響を及ぼさないのかもしれない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では以下の3点の内容を明らかとすべく、検討を行っている。 1. 油脂によるSHRSPラット寿命短縮要因として、18:1脂肪酸の関与を検討する。 2. SHRSPラットの病態(寿命短縮)進行における18:1脂肪酸の役割を解析する。 3. 18:1脂肪酸と植物ステロールの過剰摂取による他の有害作用の可能性を検討する。 このうち、平成25年度において、1.の内容に関しては明らかな相関性を確認しており、平成26年度では2.について検討を進める予定であった。しかし、菜種油独自の変化だと思われていた遺伝子発現や酵素活性のいくつかは、病態改善作用を持つ完全水添菜種油(FHCO)でも確認されたことから、検討の方針を大きく変換する必要が生じた。また、3.についての検討も、2.の結果を踏まえて実験条件を整えたいと考えているため、現在のところ手を付けられていない。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き以下の3点について検討を行う。 1. 18:1脂肪酸がSHRSPの寿命短縮においてどのような役割を示すかを明らかにするために、寿命測定と同じ条件における脂質蓄積量、遺伝子発現量を解析し、今まで明らかとしてきた他のデータと共に、どのようなメカニズムで寿命短縮が起こるのかを推察できるようにする。 2. 油脂によるSHRSPの寿命短縮はリパーゼやアルカリ処理で消失することから、18:1脂肪酸の分子系が吸収代謝に影響を及ぼす可能性がある。これを検討するためにC-14標識をしたオレイン酸又はエライジン酸を用意し、これを遊離型またはトリアシルグリセロールの型にして、臓器への蓄積性、排泄速度等を調べ、リパーゼ処理による活性消失を分子の動態で説明できるかを検討する。 3. 今までSHRSPで認められた有害作用が種や系統を超えて別の形で確認できるのかを検討するため、正常型のマウスを用いて、18:1脂肪酸と植物ステロールを過剰摂取させ、これらの動物が血圧上昇や腎障害などを示すかを観察する。 これらの結果を総合的に判断し、食用油の安全性について新たなる情報を提供していきたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
1.所属学生がおらず、実験を行える者が少なかったため。 2.予想外の実験結果から、計画の修正に時間がかかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験効率を上げるためにガスクロマトグラフィーのオートサンプラー(¥600,000程度)を購入する予定である。
|