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2013 年度 実施状況報告書

小細胞肺癌における個別化医療を目指して:アムルビシン治療バイオマーカーの解明

研究課題

研究課題/領域番号 25870610
研究種目

若手研究(B)

研究機関名古屋市立大学

研究代表者

高桑 修  名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10647332)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードアムルビシン / 小細胞肺癌 / バイオマーカー / 一遺伝子多型
研究概要

本研究は、近年既治療小細胞肺癌に対する中心的治療薬になりつつあるAmrubicin(AMR)について、その薬剤排泄や代謝に関わる遺伝子多型の検討から、効果や副作用予測バイオマーカーを同定し、安全性、有効性に優れた治療戦略の構築を目指すために立案した。具体的な目的は以下の通り設定している。1)肺癌患者におけるAMRの効果および副作用に関わる遺伝子多型を明らかにする。2)1)で得た遺伝子の働きについて基礎的実験で明らかにする。3)1)及び2)で得た結果を基に個別化医療につながる治療戦略を提案する。
まず、AMR治療症例の臨床経過をレトロスペクティブに検討しAMRの薬理作用との関連が報告されているSNPsとの関連を検討した。その結果、薬剤排泄ポンプの一つであるABCB1のSNPsとの関連において、C3435T の遺伝子型としてCCを有する症例では他の症例と比べ重篤な好中球減少率の頻度が高いことを見出した。更に、同じ遺伝子型の症例では他の遺伝子型の症例と比べて奏功率が高い傾向が見られた。C3435T の遺伝子型解析は、AMR治療における臨床的バイオマーカーの候補と考えられ、さらに症例数を増やして検討を継続するとともに、そのメカニズム解析と臨床応用へむけての基盤となる研究が求められる。最近、AMRによる骨髄抑制とAMRの活性型であるAMR-OHの血中濃度との関連性が報告されており、ABCB1のSNPsがAMR-OHの血中濃度への影響を含めて検討を進めていく。また、C3435Tの遺伝子型を利用した前向き試験も念頭に入れつつ研究を進めていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回の研究計画としては、[1] AMRおよびAMR-OHの血中濃度から薬物動態パラメーターを評価し、臨床成績の関連および薬物動態を規定するバイオマーカーを明らかにする。[2] AMRの代謝や排泄に関与するSNPsを解析し、効果や副作用に関連するSNPsを明らかにする。[3] 個別化医療にむけてのバイオマーカーの機能や具体的な応用方法を解析する、を挙げて立案した。
まず、AMR治療症例の臨床経過をレトロスペクティブに検討しAMRの薬理作用との関連が報告されているSNPsとの関連を検討した。AMRの薬理作用への影響が基礎的研究で報告、もしくは推測されている遺伝子として、AMRの代謝に関与するCBR1, CBR3, NQO1、またAMRおよびAMRの活性体であるAMR-OHを器質とするABCB1のSNPs (C3435T, G2677TA, C1236T)との関連を検討した。アムルビシンで治療を行った肺癌患者について,これでの遺伝子のSNPsと好中球減少の副作用、および治療効果との関連を検討したところ、 C3435Tに関して遺伝子型がCCの症例では,他の遺伝子型の症例に比べ好中球数減少率が有意に大きく、G4好中球減少の頻度も他の遺伝子型の症例の頻度に比べ有意に高いことが見出された。更に、同じ遺伝子型の症例では他の遺伝子型の症例と比べて奏功率が高い傾向が見られた。一方、他の遺伝子のSNPsとAMRの副作用、効果との間には有意な関連を見出すことはできなかった。ここまでの研究で、C3435T-SNPはアムルビシンによる好中球減少の発現に関与し、同治療における重篤な好中球減少の発症を予測するバイオマーカーの候補となることを明らかにすることができた。
ここまでの研究成果は国際学会を含む複数学会で発表を行い、英語論文としても投稿中である。

今後の研究の推進方策

ここまでの研究では副作用に関連するSNPsとしてABCB1のSNPを見出すことができた。またこのSNPsはAMRの効果との関連性に関しても今後さらに症例数を増やして検討していく。また、このSNPがAMRの臨床アウトカムに影響する機序の解明に向けて、AMR-OHの血中濃度に与える影響について検討をすすめていく。また、ABCB1は骨髄細胞などでの発現も報告されており、ABCB1-SNPsが血液毒性に関与する理由としては、骨髄細胞自体による機能も考えられる。血中濃度との関連の結果によっては細胞内AMR-OH濃度におけるABCB1-SNPsの働きを明らかにする基礎的研究も検討する。
さらに、これまでの臨床的なデータからはAMRを40mg/m2で使用した症例と減量した症例では、奏功率はほぼ同程度であり、一方減量した群では重篤な好中球減少の頻度が有意に低い結果を得ている。今回AMRの臨床バイオマーカー候補として見出したABCB1-SNPsを利用することで、用量調整による個別化医療につながる可能性も考えられる。今後はこうした点も視野にいれつつ前向き研究の実施を目指していく。

次年度の研究費の使用計画

今年度は主に現時点においては臨床的アウトカムとSNPsの関連性を解析する研究を進めた。その結果、ABCB1-SNPsをその候補に挙げることができたが、それらのメカニズムの解析、および血中濃度との関連性の検討は今後研究をすすめることとなる。当初の計画でH25年度分に計上していた血中濃度測定やメカニズム解析に関してH26年度に引き続き継続する方針であり、こうした研究進展の経過の状況から、次年度使用金額が発生した。
今後は、①ABCB1-SNPsがAMR治療に影響するメカニズム解析、②ABCB1以外のバイオマーカーの探索、③個別化医療に向けての前向き研究、が研究の柱となる方針である。①においてはAMRおよびAMR-OHの血中濃度の解析、②においては他のABCB1以外のSNPs解析、③においては前向き研究の実現を目指して検討をすすめる方針である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2013

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] アムルビシンによる好中球減少におけるABCB1遺伝子多型の関与2013

    • 著者名/発表者名
      高桑 修,小栗鉄也,國井英治,上村剛大,浅野貴光、市川博也、竹村昌也,前野 健,新実彰男
    • 学会等名
      肺癌学会総会
    • 発表場所
      ホテルニューオータニ(東京)
    • 年月日
      20131121-20131121
  • [学会発表] ABCB1 polymorphisms as a predictive biomarker of neutropenia induced by amrubicin2013

    • 著者名/発表者名
      Osamu Takakuwa, Tetsuya Oguri, Takehiro Uemura, Eiji Kunii, Hisatoshi Hijikata, Midori Yokoyama, Hirotsugu Ohkubo, Masaya Takemura, Ken Maeno, Akio Niimi
    • 学会等名
      European Cancer Congress 2013
    • 発表場所
      ライ・アムステルダム国際展示会場(Amsterdam, オランダ)
    • 年月日
      20130927-20131001

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公開日: 2015-05-28  

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