研究実績の概要 |
本研究では、小児期の過剰なフルクトース摂取やコレステール摂取が将来の勃起機能にどのような影響を与えるのか明らかにすることが目的である。前年度までの予備実験により、4週齢のラットに対しフルクトース水(5%、10%)を8週間与えることで勃起機能が低下すること、2%コレステロール含有の餌を8週間小児ラットに与えても勃起機能に影響を与えなかったことを明らかにした。 本年度は、フルクトース過剰摂取による勃起機能の低下の原因として終末糖化産物(advanced glycation end products; AGE)に着目し検討を始めた。まず摘出した陰茎組織を用いてreal-time PCR法によりAGE特異的受容体(receptor for AGE; RAGE)、酸化ストレス関連因子であるNADPH oxidase 1, 2, 4、炎症関連物質であるIL-6 mRNAの発現量の変動を調べた。その結果、フルクトース摂取群ではコントロール群に比べ、陰茎海綿体組織中のRAGE、NADPH oxidase 1, 2, 4、IL-6、のmRNA発現量が濃度依存的に増加し、10%群では有意差をもって増加が見られた。このことからフルクトース過剰摂取によるAGE産生に伴う酸化ストレスや炎症が勃起機能の低下につながっている可能性が示唆された。次に、一番顕著に影響が見られた10%フルクトース水投与群に対し、AGE生成阻害剤であるアミノグアニジンを毎日経口投与にて8週間与えた。8週間の投与後、勃起機能を調べた結果、アミノグアニジン投与群では、勃起機能の低下は見られず、コントロール群と同程度の勃起機能を示した。このことからもフルクトース過剰摂取がAGE生成を介して勃起機能を低下させていることが示唆された。 現在、フルクトースを8週間摂取させ、その後8週間通常水に戻して飼育した群を作成中である。今後フルクトース過剰摂取による悪影響の持続性についての検討も行っていく。
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