研究実績の概要 |
エネルギー問題が叫ばれる昨今において、稀少・有毒な金属を利用せず、低環境負荷なプロセスが適用できる太陽電池に対する社会からの要望は非常に大きなものとなっている。そのような背景で、Cu2ZnSnS4は次世代の太陽電池材料として注目を集めている。本研究では、このたいCu2ZnSnS4を大気雰囲気で大面積化に適用可能な超音波噴霧法での作製を行った。加えて、このCu2ZnSnS4にOを加えたCu2ZnSn(O,S)4という系に展開し、より太陽電池応用に適した物性を探った。本研究で得られた結果の概要は以下の通りである。 1.大気圧下で成膜可能な超音波噴霧法によって、Cu2ZnSnS4薄膜を作製することが可能となった。用いる原料についても安全性の高いものであり、全大気開放システムでの太陽電池デバイスの可能性を示した。2.超音波噴霧法での成膜プロセスについて調査したところ、Cuの酸化数を同一温度でも制御できることを示した。その結果、Cu2+を含む原料を用いても、Cu2ZnSnS4中のCu+として導入できるほか、Cu2OやCuOを作り分けられるなどの派生効果も得られた。3.超音波噴霧法と同様の装置構成で硫化することで、膜中のS濃度とO濃度を制御できることを示した。これらについて、詳細な薄膜物性については更なる検討が必要であるものの、Seを用いずにバンドギャップを縮小できる可能性を示した。
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