研究課題/領域番号 |
25870615
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
クォ ヤ ウェン 京都府立大学, 生命環境科学研究科(系), 研究員 (70640431)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 日本統治時代 / 日本人住宅地 / 日式住宅 / 供給型住宅 / 台北帝国大学 / 官舎 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、研究課題を「現存する供給型住宅の実測調査、インタビュー調査による実態の把握」とし、調査・分析を行った。
現地調査によると、日本植民政府や公的機関により建設された供給型住宅である官舎、社宅と移民住宅は、終戦後も撤去されず、今日まで台湾漢人によって住み続けられている住宅があった。今年度は、まず、現存する旧台北帝国大学(現台湾大学)の大学官舎遺構を中心に、建物外観、寸法、構造、建築形式などの実態を調査し、現居住者、日本人元居住者のインタビュー調査によって明らかにする。
それらの調査により得られた結果の例として、①大学官舎は、教員の職階によって割り当てられる「高等官官舎第三種」(一戸建、10戸)、「高等官官舎第四種」(一戸建、16戸)、「判任官官舎丙種」(二戸建、14戸)の三種類の規模があり、さらに、教員が利用できる娯楽施設および交流の場を持つ単身官舎(16戸)もあった。②「高等官官舎第三種」の主屋は、間口9間半、奥行5間の、「高等官官舎第四種」の主屋は、間口7間、奥行4間半強の瓦葺きの平入平屋建ての木造住宅で、江戸間であった。外壁は二種類とも下見板張りであった。③「判任官官舎丙種」の主屋は、二戸建てで、一戸当たりの間口4間半、奥行3間半の瓦葺の平入平屋建てのレンガ造であった。また、「単身官舎」は、平入平屋建てのレンガ造であり、主屋は、敷地の東西に三つの棟が並び、その中央に廊下を通路として繋げられた。共同用の「娯楽室」、「談話室」、「閲覧室」、「食堂」などが設けられていた。④平面構成の共通点としては、高等官官舎の場合は、玄関の隣に「書斎兼応接間」という板張りの洋室、「女中室」が設けられたことが挙げられる。また、官舎等級に関わらず、玄関、台所、浴室、トイレが設けられ、さらに、座敷や客間が必ず裏庭に面して配置された点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
台湾の日本統治時期に関する史料・資料は、現在、主に国立中央図書館台湾分館と国史館台湾文献館に所蔵されている。当時の植民政府である台湾総督府に関する書物、新聞や公文類纂などの史料・資料が残されているため、本研究では、台湾においても、史料・資料文献調査を行っている。また、当時の供給型住宅の実態を把握するために、日本統治時期に建設した官舎の遺構が残っている旧台北帝国大学(現台湾大学)を訪ね、許可を得た上で、旧昭和町の大学官舎の建築形式や居住状況などの実態について現地調査やインタビュー調査を行った。
これまでに日本統治時期の地図や地形図などを手に入れたが、国史館台湾文献館では、史料・資料を閲覧するための電子化のシステムを現在導入中であるため、供給型住宅(官舎、社宅、移民住宅、営団住宅)に関する史料・資料や配置図、平面図などの図面、仕様書については、調査することが出来ない状況となっている。そのため、当時の供給型住宅の全体像や各種類の建築的特徴までの分析を終えるにはまだ至っていない。今後は、それらの分析を行い、研究結果としてまとめることを予定している。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、上記諸史料・資料に掲載された図面や写真の分析に加えて、現存する旧台北帝国大学(現台湾大学)の大学官舎の遺構を中心に、建物外観、寸法、構造などの現地調査や現居住者、居住していた日本人元居住者のインタビュー調査によって、その実態を明確にした。
今後は、当時の史料・資料が電子化され次第、各種類の供給型住宅(官舎、社宅、移民住宅、営団住宅)に関する図面、写真などを入手し、収集した史料、資料、写真や遺構の調査、インタビュー調査の結果を総合することにより、台湾で建設された供給型の日式住宅について、それぞれの建築的特徴などの解明を進める。また、供給型住宅の営団住宅は現存していないため、文献史料・資料により分析を行う予定である。その上で、現在までの研究によって明らかとなった持家についての成果と比較検討することで、台湾の日式住宅、住宅地の全体像を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究を遂行するため、国内外の文献、資料の収集・複写・印刷、データの購入などの経費を計上していた。しかし、国史館台湾文献館では、平成25年度から、当時の資料を閲覧するための電子化のシステムが導入される最中であるため、現在、史料・資料調査することが出来ない状況となっている。そのため、日本統治時期の図面、史料・資料などの複写や印刷の経費が残る結果となった。
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次年度使用額の使用計画 |
日本統治時期の史料・資料が電子化されれば、これまで以上に官舎、社宅、移民住宅、営団住宅に関する文献史料・資料や図面、写真などを入手しやすくなり、当時の供給型住宅の全体像やそれぞれの建築的特徴などの解明が進められると考えられるため、次年度での計画で予算を使用する予定である。 平成27年度は、収集した史料・資料、図面、仕様書、写真などの分析を行い、さらに現存している官舎以外の民間の社宅や移民住宅の遺構を中心に、建物外観、寸法、構造、使用状況、庭の状況などを現地調査やインタビュー調査を行う予定である。それらの分析を行い、台湾で建設された供給型の日式住宅について、それぞれの平面構成などの建築的特徴やその実態を明らかにすることを目指している。その上で、現在までの研究によって明らかとなった持家についての成果と比較検討することで、台湾の日式住宅、住宅地の全体像を明らかにする。
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