本研究は、日本統治下の台湾で日本人により建設された日式住宅の供給型住宅の特徴とその住宅地の形成過程を明らかにすることを目的としている。
平成25年度は、研究課題を「文献史料・資料による台湾日式住宅の供給型住宅の建設経緯、形成背景の把握」とし、当時の図面、写真などに関する史料調査を行い、台湾日式住宅建設に至る歴史的背景や供給型住宅、住宅地の建設経緯を把握した。平成26年度、27年度は、研究課題を「現存する供給型住宅の実測調査、インタビュー調査による実態の把握」とし、現存する旧台北帝国大学の大学官舎遺構を中心に建築外観、形式、平面的な特徴などの実態を調査し、現居住者、元日本人居住者のインタビュー調査・分析を行った。
平成28年度は、研究課題を「台湾日式住宅の建築的特徴の解明」とし、追加調査・分析を行い、収集した史料、写真や遺構の実測調査、インタビュー調査の結果を総合することにより、供給型住宅である大学官舎の平面構成などの建築的特徴を解明した。その上で、現在までの研究によって明確になった個人所有住宅研究の成果と比較検討することで、供給型住宅の特徴とその住宅地の形成過程を明らかにする。旧台北帝国大学の大学官舎住宅地の東西に四つ道路が計画され、各通り道の両側に40 戸(33 軒)の官舎と単身官舎が1 棟建設された。平面構成の共通点としては、高等官官舎の場合は、「書斎兼応接間」という板張りの洋室、「女中室」が設けられたことが挙げられる。官舎等級に関わらず、玄関、台所、浴室、トイレが設けられ、さらに、座敷や客間が必ず裏庭に面して配置された点である。なお、入居者の要求に応じて建設された住宅ではなかったため、想定された通りには使用されない事例が見られた。建物の増改築は自由にできなかったが、入居者によって多く台湾の熱帯植物が植えられたため、官舎ではあったが入居者がある程度変更することができたと考えられる。
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