研究課題/領域番号 |
25870616
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
竹中 祐二 京都府立大学, 公共政策学部, 研究員 (40631578)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 更生保護 / 司法福祉 / BBS活動 / 社会病理学 / 犯罪社会学 |
研究実績の概要 |
【研究目的】 本研究は、更生保護を支えてきた重要な活動の一つであるBBS(Big Brothers and Sisters movement)活動を対象とし、歴史的経緯から活動の意義や目指されるべき方向性を明らかにし、現状との比較・分析を行うことを目的とする。BBS活動についての論考は散見されるが、その数は少なく、また、ほとんどが活動紹介に基づく意義や成果の報告に留まり、理論的側面からの基礎研究は全く見当たらない。特に、罪を犯した者の「社会の一員としての立ち直り」を目指すべきものであるにもかかわらず、更生保護活動自体への社会学的観点からの分析は等閑視されてきた。本研究を、これまで行われてこなかったBBS活動に対する社会学的基礎研究の糸口としたい。 【平成26年度の研究実績】 平成26年度は、前年度に不十分であった資料の収集と分析を行った。直接原典にあたって精査する等の実作業に時間が割かれざるを得なかったものの、その分有益な資料を手に入れることができた。また、分析を進める過程で新たに必要となる新規資料の収集や、新たに出版された書籍類の獲得にも努めた。分析においても制度の詳細やその成立背景の事情等について、先行研究とは異なる視点を見つけ出すよう努めた。その結果、学会報告を2本、論文投稿を1本実施した。 また、本来は平成26年度中に調査を実施・完了する予定であったが、諸般の事情から十分に行うことができなかった。その一方で、当初予定していなかった関係団体・関係機関からの御協力を得ることもでき、少しずつではあるが良い聞き取り調査ができていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年度は、平成25年度に遅れの発生した資料収集と分析を行わざるを得ず、さらに、現存資料の少なさから原典にあたって精査する等の実作業に時間が割かれざるを得ず、物理的な時間をさらに要した。しかし、その分、十分な作業を行うことはできたため、成果としては非常に良好であると考えている。 分析内容においては、制度論・政策論ベースで積み重ねてきた分析内容に対して、社会学的な観点からさらなる分析を行うことができた。例えば少年法改定や更生保護法成立の時代背景や、立案者の思惑と世論との関係といった、先行研究で十分に触れられていない論点についての分析を進めることができた。さらに、社会病理学、社会福祉学の領域において更生保護を捉え直すことの意義と、その反対に更生保護研究を手段とした社会病理学、社会福祉学の有り様についての問題提起も行うことができている。現在は犯罪学理論に基づいた実践活動の分析を引き続き行っているが、犯罪社会学の領域においても同様のスタンスで分析結果をまとめていきたいと考えている。 聞き取り調査においては一定の成果を上げつつあると考えている。協力予定の機関・団体についても調査の趣旨を御理解いただいているが、具体的な日程調整が難航していることが、遅れが発生している要因である。また、BBS会員への聞き取り調査についても、協力の内諾を得てからの調整に時間がかかり、特に大学生への聞き取り調査ということもあって、就職活動等の事情から協力予定者が引退するといった事情から、一から趣旨説明と協力依頼を行わねばならなくなったことも、遅れが発生した要因である。幸い、平成27年度前半には完了する目途を立てることができた。一部先行して実施することができた分に関しては、過年度中の研究によって得られた仮説とは異なる新たな気付きを得ることができるなど、成果としては非常に良好であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は最終年度にあたるが、過年度までの遅れを取り戻す作業も含んでいるが、大きく3つの事柄に取り組んでいきたい。 1つ目は、調査の継続実施と分析である。上期中に継続して聞き取り調査を行い、さらに質問紙調査も実施することで、質/量の両側面から分析内容の実証あるいは仮説の精査・検証に努めていきたいと考えている。 2つ目は、研究成果の発表である。上記の調査については分析途上のため形にすることは難しいが、当初予定では平成26年度中に行うはずであった学会報告や論文投稿について、過年度までの内容を基に積極的に行っていく。 3つ目は、知見の統合である。当初予定通りに、個々の成果を一つにまとめ上げる必要があることから、よりマクロに、あるいはメタ的に研究成果を捉え直すという視点を大切に、特に下期からはその作業に取り組んでいき、全体的な報告書作成にも挑戦したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度から発生した作業の遅れの内、分析結果のまとめが不十分であったため学会報告の本数が予定より少なくなった。また、調査実施にあたっての事務作業の不備等から調査謝礼の購入や調査票印刷並びに授受の通信費が未執行となった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は学会報告等を積極的に行うことから、その分の旅費として充当する。さらに、調査謝礼の購入と調査票印刷並びに授受の通信費として執行する。
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