研究実績の概要 |
ホウ素中性子捕捉療法 (BNCT) 用ホウ素薬剤の分子設計において、アニオン性のドデカボレート([B12H12]2-)は、高いホウ素原子占有率、低毒性および高い水溶性など、ホウ素薬剤に求められる性質を備えていることから、有望なホウ素原子団であると考えられている。しかし、無機性のドデカボレートを腫瘍親和性有機分子に直接導入することは困難であり、その有機分子化に関する報告例は非常に少ない。 そこで本研究では、これまで殆ど研究されてこなかったドデカボレートアンモニウム([B12H11NH3]1-, DB-NH3)を、腫瘍親和性有機分子に導入した新規なホウ素薬剤の開発を目的として展開するものであり、DB-NH3を導入するための素反応の開発、および腫瘍細胞による集積性と細胞内分布、中性子線照射による殺細胞効果等の生物活性評価を行う。 27年度の研究では、DB-NH3へ種々の保護基の導入を導入した後にモノアルキル化することのできる反応方法について詳細に検討を行った。また、前年度までに合成したDB-NH3を導入したアミノ酸誘導体(AA-BNH2)の腫瘍細胞内分布について詳細に検討を行った。 その結果、種々のウレタン型の保護基を導入後、極めて低い収率ながらアルキル化を行うことのできる条件を見出すことに成功した。 また、昨年度までに合成したAA-BNH2に関しては、グリオーマ細胞、メラノーマ細胞あるいはカルシノーマ細胞などの様々な細胞において、細胞核を含む細胞全体に幅広く分布するBNCTにとっては理想的な分布を示す化合物であるという結果が得られた。
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