本研究は、五四期に誕生した白話の小説文体が、1930~40年代にどのように各作家の文体の中に定着し流通していったのかを考察するものである。「文体作家」と称された沈従文を中心に、その「文体史」上の意義を位置づけた。成果として指摘したのは、主に以下の三点である。(1)沈従文後期作品における難解な「抽象表現」の重要性(2)ジェンダー論・ナショナリズム論から見た沈従文の他者表象の意義(3)小説家による詩論の意義。 同時に、「文学形式」をめぐって、若手研究者の国際的共同研究グループを立ち上げ、連続ワークショップという形で研究交流を継続的に進める土台を作った。
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