これまでスーパー・コンピュータでなければ不可能とされていた数万から数十万個の節点をもつ大規模シミュレーションもパソコンで取り扱うことが可能となってきたことに伴い,より高精度かつ高速な数値解法が求められるようになってきた.本研究では,偏微分方程式の境界値問題の数値解法として近年注目を集めているメッシュレス法に着目している.有限要素法(FEM)や境界要素法(BEM)のようにメッシュレス法は要素分割という処理を全く必要としないため,入力データを簡素化できる利点をもつ.さらに,要素上ではなく節点間情報を用いて解や法線微係数を近似するため,滑らかな数値解が得られる利点もある.しかしながら,メッシュレス法はFEMやBEMと比べて概ね高精度な解が得られる反面,計算スピードが非常に遅いという問題が残っていた.本研究の目的は,精度とスピードの観点から領域型及び境界型メッシュレス法を改良し,さらに,メッシュレス法による大規模シミュレーションの実現を目指すことである. これまで,電磁波の定常散乱問題はFEMとBEMをそれぞれ内部問題と外部問題に適用した混合解法で解かれてきた.従来法では,対象領域,境界及び界面を要素の集合に分割しなければならず,対象の形状が複雑になるほど,その処理には多大な時間と労力を要してしまう.平成28年度の研究では,FEMとBEMの代わりにメッシュレス法による混合解法を提案した.さらに,同法を電磁波の定常散乱問題に適用し,提案法の性能を数値的に調査した. 数値実験の結果,波数とは無関係に精度の収束率はほとんど同じであるが,提案法の精度は波数の値の増加に伴って低下した.さらに,リスタートなしGMRES法は大規模シミュレーションのための有益なソルバーになり得ることが示された.
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